【自民党と企業献金 蜜月の半世紀】#8
平成に入り、日本の大企業は凋落の一途をたどった。
経済メディア「STARTUPS JOURNAL」によると、1989(平成元)年の企業の時価総額は、世界のトップ50社のうち日本企業が32社を占めていたが、2024年はトヨタ自動車の1社だけ。順位は39位だった。財務省の元幹部は「最後の望みはトヨタ。トヨタですらランクインしなくなれば、日本経済はもう駄目だ」と言う。
この間、経団連傘下の大企業は自民にせっせと献金を続け、自分たちに有利な経済政策を実行するよう求めてきた。
自民はその希望に応え、経団連はその成果を「政党評価」という形で称賛。会員企業がさらに献金をするというサイクルだ。だが、企業の国際競争力は下降の一途をたどった。
パートナーの自民も凋落した。裏金問題を契機に政治と金で国民から非難を浴び、首相の岸田文雄は退任を表明した。
それでも経団連と自民は、互いに支え合っている。自民は野党から企業・団体献金の禁止を求められても頑として拒んだ。経団連会長の十倉雅和(住友化学会長)は23年12月、自民党への政治献金について記者会見で問われ、こう言った。
「民主主義の維持には相応のコストがかかる。政党に企業がクリーンな寄付をすることは社会貢献の一環で、重要だ」
■社会貢献とは社会からこぼれ落ちる人をなくすこと
リーマン・ショック後の派遣労働者たちの雇い止めを、09年に取材したことがある。20代の夫婦は派遣会社の寮を追われ、ラブホテルを転々。その後、生活保護で名古屋市内の施設に身を寄せていた。風呂がない。妻は銭湯に通い、夫は節約のためベランダでホースを使って体を洗っていた。妻は「20代で生活保護なんてドン引き。仕事をみつけたら正社員になりたい。子どもがほしいけど、とても産めない」と言った。
「社会貢献」というのは、金の力で政治を動かして、大企業の社員だけを守ることではない。社会からこぼれ落ちる人をなくすことだ。大企業の「我田引水」で今、何が起きているか。経団連の幹部は、大きなビルのオフィスを出て困窮の現場を歩くといい。 (敬称略)
▽渡辺周(Tansa 編集長)日本テレビを経て2000年に朝日新聞入社。17年にワセダクロニクル(現Tansa)を創刊、電通と共同通信社の癒着を暴く「買われた記事」で、日本外国特派員協会「報道の自由推進賞」。寄付で運営し非営利独立を貫く。ご支援を!