雪がまとわりつくことで樹氷やスノーモンスターを生み出す常緑針葉樹「オオシラビソ」を、山形・蔵王国定公園内で山形大の教員が無断で伐採したことが分かり、山形大は5日、臨時の記者会見を開いた。玉手英利学長は「官民を挙げて地域の宝である樹氷の復活に向けて取り組む中、無許可で伐採したことを重く受け止めている」と謝罪した。
大学側の説明によると、本学学術研究院教員(農学部主担当)は今年10月、手続き上の勘違いで山形森林管理署の許可がないまま、蔵王国定公園特別保護地区内の地蔵山頂駅周辺の国有林でオオシラビソの枯損木56本を伐採した。
教員は4月に申請書を提出し、入山とドローンによる撮影の許可を受けていたが、伐採の許可は不受理だった。教員はオオシラビソが枯れた理由について、木の栄養や健康状態を知るために伐採したという。オオシラビソは近年、大量の立ち枯れが問題になっている。
標高1500メートル付近に自生するオオシラビソは、氷点下5度以下になった水蒸気や水滴が樹木に吹き付けられたことで、凍り付いて樹氷になる。樹氷は成長を重ねると風の吹く方向に反り返るため「エビの尻尾」を作り、さらに積み重なってスノーモンスターと呼ばれる青森・八甲田山系や蔵王山系でしか見ることができない、世界的にも珍しい独特の風景を作りだす。
同学農学部の渡部徹学部長は「法令に抵触しないとはいえ、本人は非常に反省し、おわびを口にしている。研究を続けられることができるならば、知見を保全に生かしていきたい」と話した。