「被害に遭われている方がね、19人もいらっしゃるんですよ」。これは、実際にかかってきた警察官をかたる詐欺の電話です。いま各地で急増する悪質な手口が、やりとりの一部始終から見えてきました。
◇
日本テレビ系列局のスタッフのLINE通話の様子です。
電話の男
「あなたの口座にお金を振り込まれてしまった人がいっぱいいるということで」
日テレ系列局・50代スタッフ
「でも口座には振り込みはないんですけども」
電話の男
「だからこちらで押収している口座に関してです」
相手のアカウント名は「検察庁管理」。きっかけは先月、熊本で仕事中にかかってきた一本の電話でした。
「徳島県警のイマダです」
電話をかけてきたのは、徳島県警を名乗る男。警察官をかたる詐欺の電話です。
表示されている相手の電話番号は、下4桁が「0110」で、これは警察署で使われる番号です。しかし、なぜか発信元はバングラデシュ…。
男は“LINEからかけ直す”と言い、スタッフがアカウントを教えると、再度、電話が。スタッフの口座が詐欺に使われていると告げ、捜査協力を求めてきたといいます。
電話の男
「被害に遭われている方がね、19人もいらっしゃるんですよ。誰かいま一緒にいますよね？」
日テレ系列局・50代スタッフ
「いや、いないです。1人だけの個室です」
電話の男
「声が聞こえましたよ、いま」
スタッフが会社の外へ出るよう繰り返し誘導し、1人にさせようとする男。「身に覚えがない」と伝えるも、「徳島県までこなければ身柄を拘束する」と強い口調で要求してきたといいます。
日テレ系列局・50代スタッフ
「徳島県警さんとのやりとりだけになるんですか？ 熊本の警察に行ってお話しするとかはダメなんですか？」
電話の男
「捜査権が徳島県警にあるので、熊本に行かれても意味はないんですよね」
地元・熊本の警察に行かないよう、念押しをする男。スタッフは通話を続けながら、110番通報を受けて駆けつけた本物の警察官のもとへ。通話はそこで切れました。
◇
いま、急増しているという“警察官をかたる詐欺”。警察庁によると、今年に入ってから2か月で1039件確認されていて、被害総額は約106億円にのぼります。
これは、実際に起きた特殊詐欺事件で、警察官をかたる人物が被害者とLINE通話をする様子。
偽の警察手帳を見せ、警察で誘導することはあり得ないLINEのやりとりでは、偽の逮捕状を送るなど、私たちの動揺を誘うような巧妙な手口を使用。時にはAIで顔を変えることもあるといいます。
また、詐欺電話で最も多く悪用されているのが、新宿警察署の電話番号。去年1月から先月までに825件確認されているといいます。
◇
愛知県に住む30代の女性のもとにも。
愛知在住・電話受けた女性（30代）
「全部で3回、詐欺っぽい電話を受けていて、奈良とか大阪らへんの警察を名乗った人からの電話。最後は『0110』で警察に似せたような番号ですね」
かかってきたのは、こちらも末尾「0110」の番号。その時のやりとりでは…
警視庁かたる人物
「奈良県警からの捜査協力要請受けまして、いま東京の警視庁の方から電話しています。奈良県内で起きた事件と聞いて、警察から連絡が来て心当たりなかったでしょうか？」
愛知在住・女性（30代）
「ないです」
警視庁かたる人物
「全くないですか？」
愛知在住・女性（30代）
「はい」
警視庁かたる人物
「奈良県警の方で『タドコロツヨシ』という男を主犯格とする詐欺グループの事件の捜査を進めていまして、（女性の名前）名義の○○銀行のキャッシュカード、こちら1枚みつかりまして、資金洗浄に加担しているのではないかと容疑がかかっている。『タドコロツヨシ』とはどういう関係ですか？」
愛知在住・女性（30代）
「誰ですか。誰かも知りません」
◇
愛知在住・電話受けた女性（30代）
「最初の電話の時は、名前と住所を先に言われてちょっとドキッとした。祖母とかは、もしそういう電話があったらたぶん気づかないだろうと思う」
もはや、警察の番号からの電話すら、疑わなければならない時代。私たちはどのように気をつければいいのでしょうか？
藤井貴彦キャスター
「警察官をかたる詐欺の電話で注意するポイントをいくつか挙げていきます」
「警察庁によりますと、実在する警察署の電話番号や下4桁が多くの警察署で使われている『0110』の番号に偽装して電話をかけてくる手口も増えています。また『＋』から始まる国際電話にも注意が必要だということです。日本の場合は『＋81』となりますが、それ以外だと国際電話だということになります」
「警察庁は、警察官が電話で『捜査対象になっている』などと伝えることはありませんし、SNSを連絡手段として警察手帳や逮捕状の画像を送ることも決してないと注意を呼びかけています。こうした手口に気づいたら、まず電話を切って、警察相談専用電話『＃9110』にご相談ください、ということです」
（4月2日放送『news zero』より）