トランプ関税対策で空転する永田町の不甲斐なさ

国民の生活を守るには「減税」なのか、それとも「給付金」なのか。夏に予定される参議院選挙を前に、永田町では大きな論争となっている。
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4月9日、アメリカのドナルド・トランプ大統領が表明した追加関税の「上乗せ分」について、日本を含む約70の国・地域で90日間のモラトリアム(猶予期間)が付与された。一方で、自動車に対する25%の関税は課せられたままだ。
石破茂首相は4月11日、最側近の赤沢亮正・経済再生担当相を対米交渉担当に正式に任命したが、赤沢氏は同日の会見で「胃が1センチ、せり上がった」と述べたほど、重圧を感じている。誰も「90日後の日本」を想像できない状況だ。
ブレまくる石破首相のスタンス
4月から値上げとなった食料品は4000品目を超える。加えて、備蓄米を放出してもコメの値段がなかなか下がらないという問題もある。
しかしながら、石破首相の肝は据わらない。3月28日の参院予算委員会で「物価高対策として考えられないわけではない」と消費税減税の可能性について言及したが、4月1日の記者会見では「税率の引き下げは適当ではないと考えている」と、食料品を対象とした消費税減税を否定した。
ところが、翌2日に自民党の松山政司参院幹事長が石破首相に「党内には減税すべきだという声もある」と伝えると、5日の民放番組では「党の意向を尊重する」と発言。にもかかわらず、7日の参院決算委員会では「現時点では減税うんぬんについて口にすべきだとは思っていない」と最大限の留保をつけるなど、政権発足以来最大の国難に際して石破首相の足元はフラフラだ。
そんな石破首相に発破をかけるかのように、公明党の斉藤鉄夫代表は4月11日の会見で、こう明言した。
「私たち公明党は物価高に加え、米国の関税措置による影響が広がる中で最も効果的な対策は、減税によって企業や家計の負担を直接軽減することだと考える」
斉藤氏は「減税には法改正のプロセスが必要で、時間がかかる」としたうえで、「つなぎの措置として現金還付をすることについては、一定の理解ができる」と述べて、柔軟な姿勢を示した。
そもそも生活必需品に対する軽減税率は、消費税の税率を8%から10%に引き上げた際に公明党が提唱したものだ。しかも公明党は、昨年12月の自公国3党幹事長合意が暗礁に乗り上げた後、所得税の課税限度額の引き上げを党是とする国民民主党に歩み寄りを見せた。次期参院選で飛躍が見込まれる国民民主党と、さらに歩調を合わせるチャンスでもある。

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