1週間で来場者50万人超も、心配な大雨・暑さ対策。大阪・関西万博は成功するのか 海外パビリオンに長蛇の列、「ここから後ろは入れません」と突然の入場打ち切りも

4月13日に開幕した大阪・関西万博は、19日までの最初の1週間で一般来場者が52万4937人となり、50万人を突破した。2005年の愛知万博は最初の1週間の来場者が42万6千人で、日本国際博覧会協会(万博協会)の担当者は「順調な滑り出し」とこれからの伸びに期待を寄せている。ただ、会場はたびたび大雨に見舞われ、これからの季節は暑さも大敵。万博を成功に導くためには天候への対応や混雑緩和が課題になりそうだ。(共同通信=大阪・関西万博取材班)
※取材班が音声でも解説しています。「共同通信Podcast」でお聴きください。
▽ミャクミャク像に人だかり
公式キャラクター「ミャクミャク」像の写真を撮る来場者=2025年4月13日午前、大阪市此花区の夢洲
会場では公式キャラクター「ミャクミャク」が大人気だ。東西ゲート付近にはそれぞれ高さ約4メートルのモニュメント像が設置され、会場を訪れた人たちが列をなして撮影を楽しむのがおなじみの光景になっている。奇抜なデザインに「不気味」との声もあったが、今や〝万博の顔〟として欠かせない存在になっている。 神戸市の尭(たかし)友理さん(51)は「背筋がぞわっとする気持ち悪さが愛くるしい。かわいいと気づくのがみんな遅いわ」と話す。アメリカから訪れたアマンダ・ホフマンさん(44)は「最初は奇妙だと思ったが、動く姿を見るうちにチャーミングさに気づいた」と笑う。
会場内のショップには、ぬいぐるみや文房具、お菓子といった関連グッズがずらりと並び、店舗の担当者は「想像以上の売り上げ」と驚いている。 コラボ商品も評判が良い。スポーツ大手ミズノが2月、赤と青のミャクミャクデザインのシューズをオンラインストアで発売すると、瞬く間に完売。シューズを履いて来場した愛知県豊田市の小柳晴加さん(32)は「靴の色味が良くて気に入っている」と満足げに語る。
▽人気ゲーム「マイクラ」テーマのイベントも
スコットランドのイベントが開かれ、ゲームを体験する来場者ら=2025年4月17日午後、大阪市此花区の夢洲
大阪・関西万博には158の国・地域と7の国際機関が参加し、企業のパビリオンもある。海外パビリオンでは常設の展示に加え、各国の特徴を紹介するイベントが日々開かれ、人気を集めている。 4月17日にはイギリス北部、スコットランド地方のイベントが開かれ、地域で盛んなゲーム産業の現状を紹介した。ブロックで建物などを創作できる人気ゲーム「マインクラフト」の開発関係者らが登壇するパネルディスカッションがあり、「人口は少なくても、ゲーム業界に与える影響は大きい」と強調した。
インドネシアパビリオンの屋外スペースで披露された伝統的な踊り=2025年4月14日、大阪市此花区の夢洲
インドネシアのパビリオン周辺にもたびたび人だかりができる。屋外にスペースが設けられ、館内に入らない人にも催しの様子が見えるためだ。4月14日には伝統的な踊りが披露され、色鮮やかな衣装を身にまとった人が音楽に合わせて腕に着けた金属の装具を巧みに使って踊った。 踊りを見た奈良県大和郡山市の竹谷幸さん(44)は「インドネシアに行ったことはあったが、このダンスは初めて見た。衣装がきれいですてき」と目を輝かせた。
▽ずぶ濡れ、震える来場者
雨を避け、大屋根リングの下に避難した人たち=2025年4月13日午後、大阪市此花区の夢洲
ただ、初日は波乱の幕開けだった。会場直結の大阪メトロ夢洲(ゆめしま)駅は早朝からごった返した。東ゲート付近では通信障害が発生し、一時は携帯電話がつながりにくい状態になった。入場時にかざすQRコードの表示に時間がかかったため、混雑に拍車をかける状況が生じた。
当日は開幕を記念して、会場上空で航空自衛隊のアクロバット飛行チーム「ブルーインパルス」の展示飛行が予定されていたものの、悪天候で中止に。その後雨風が強まり、夕方にかけて帰宅する人が急増した結果、夢洲駅の入場が一時規制されてゲート付近が再び大混雑する事態になった。 警備員は「押さないで!」と声を張り上げ、横殴りの雨の中、長時間待たされた人たちは体を震わせた。栃木県栃木市の地方公務員大賀俊さん(34)は「バスで帰ればよかった」と後悔した。 会場のシンボルとなる大屋根リングは雨宿りのスペースになると期待されたが、強い風で雨が吹き込み、来場者が傘を差して歩く姿も見られた。落雷の懸念があるとして、リング上への立ち入りが制限された場面もあった。
開幕後初の夏日となり、ミストを浴びる来場者=2025年4月19日午後、大阪市此花区の夢洲
これからの季節は暑さも大敵だ。開幕後最初の土曜日となった4月19日は好天に恵まれ、気温がぐんぐん上昇。午後には大阪市で28・1度を記録し、来場者は日傘や帽子で暑さをしのいだ。会場内の各所には無料のウオーターサーバーが設置されている。マイボトルに水を補充していた愛知県蟹江町の会社員松下ひろみさん(36)は「ごみも出ないし、冷たい水が飲めてうれしい」と話した。 アイスランドやスウェーデンなど5カ国が共同出展する北欧館では屋外で長時間並ぶ人に日傘を貸し出した。オマーン館や韓国館は独自のミストを設置し、暑さを和らげた。
▽一番の課題は待ち時間
大阪・関西万博が開幕し、大勢の人でにぎわう会場=2025年4月13日午前、大阪市此花区の夢洲
万博の運営を担う日本国際博覧会協会(万博協会)は「不断の改善」を掲げ、次々と浮上する課題へ必死に対処している。初日に起きた通信障害を受け、移動基地局とWi―Fiを設置した。
暑さ対策でも、ミストやパラソルの本格稼働を前倒ししたほか、参加国や企業にも対策を要請した。4月19日、2度目に訪れた女性は「入場時の誘導がこなれていた」と改善を実感していた。
一番の課題はパビリオンの待ち時間だ。万博協会のパビリオン予約システムは参加国、来場者双方に「使い勝手が悪い」との声が広がる。協会のシステムを採用しないパビリオンもあるため、予約をせずに訪れる来場者も多い。 4月19日に予約制を始めたアメリカ館は、午後4時から予約なしの受け入れも実施。瞬く間に数百人の列となり、スタッフが「ここから後ろは入れない」と打ち切った。突然の宣告に「月の石を見たかった」と不満げな来場者の姿も見られた。
万博は会期後半に来場者が伸びるとされる。しかし今回の会場は人工島に設けられたため、公共交通機関の輸送能力から、1日当たりの来場者数が限られている。運営費の赤字回避には入場券が1800万枚売れる必要があり、会期前半での積み上げが欠かせない。

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