3万年前の旧石器人、手こぎ舟で台湾から与那国島へ到達「可能」…実験航海と海流解析で「古代史の謎」解明

3万年前の旧石器人が、手こぎの舟で台湾から与那国島(沖縄県)に渡るのは「可能」だったとする分析を、東京大などの研究チームが発表した。当時の丸木舟を再現した実験航海と、スーパーコンピューターによる海流解析の結果、工夫次第で海を渡れた確率が高いことが分かったという。論文が26日、科学誌「サイエンス・アドバンシズ」に掲載された。
日本人の祖先は北海道、対馬、琉球諸島の3ルートで大陸から渡来したと考えられている。琉球諸島ルートは後期旧石器時代の約3万5000~3万年前頃とされるが、台湾と与那国島は秒速1~2メートルの強い海流「黒潮」に隔てられている。どのように海を渡ったかは謎だった。
国立科学博物館などの研究チームは2019年、杉の木をくりぬいた丸木舟で225キロ・メートルの実験航海を行った。男女5人のこぎ手は台湾東岸を出発し、太陽や星の位置などを手がかりに45時間かけて与那国島に到達した。
その後、海洋研究開発機構などがスパコンで3万年前の状況を計算すると、黒潮は現在より1~2割速かったことが判明。実験航海の結果から丸木舟の速度を最大で秒速1・08メートルとして想定実験を行うと、流されることを計算に入れて黒潮にやや逆らう角度でこぎ進めると、航海の成功確率が高まることがわかった。
研究チームの代表で、東大総合研究博物館の海部陽介教授は「祖先たちが、海流の影響を理解し、熟練の操船技術を駆使して海を渡った『戦略的な挑戦者』だったことを突き止められた」と話している。

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