福岡・水巻の女性強殺、被害者妹を起訴 知人女性といびつな関係

福岡県水巻町の住宅で辻つぐみさん(当時52歳)を殺害し預金通帳を奪うなどしたとして、妹ら女性3人が強盗殺人容疑で逮捕された事件で、妹の辻和美容疑者(51)が、知人の岡村恵美容疑者(46)について「まとまった金を必要としていると思った」と供述していることが捜査関係者への取材で判明した。和美容疑者は長年にわたって岡村容疑者に金を渡しており、県警は金銭を巡る2人のいびつな関係が事件につながったとみている。
福岡地検小倉支部は8日、和美容疑者を強盗殺人罪▽岡村容疑者を強盗致死罪▽岡村容疑者の長女、愛香容疑者(24)を組織犯罪処罰法違反――でそれぞれ起訴した。
捜査関係者によると、和美被告は姉宅に入り、預金通帳などを奪ったことを認める一方、殺害を否認しているという。岡村被告は県警の調べに「まさか殺してくるとは思わなかった」と供述していたといい、地検は「岡村被告に殺意はなかった」と判断した。
借金の形跡なし「返さないと」
捜査関係者によると、和美被告は約20年前に仕事を通じて岡村被告と知り合い、さまざまな理由で金を渡すようになった。金額は十数年間で数千万円に上るとみられ、困窮した和美被告は夫や子どもと別れ、公営住宅を出て十数年前から野宿のような生活となった。その後も周囲に金を借りるなどして、岡村被告に金を渡し続けたという。
和美被告は調べに対し、岡村被告との関係を「友人」とし、「借金を返さなければいけなかった」とも供述しているという。だが、岡村被告から金を借りた形跡はなかった。
和美被告は事件直後、辻さんの預金口座からほぼ全額の現金約74万円を引き出したとして、詐欺罪でも起訴されているが、逮捕時の所持金は1000円だった。岡村被告らは事件後に数十万円の買い物をしていたことが判明しており、引き出した金も大半が岡村被告側に渡ったとみられる。
起訴状によると、和美被告と岡村被告は共謀して6月2日午後0時50分~同1時半ごろ、水巻町の町営住宅で住人の辻さんに催涙スプレーを噴射するなどし、首を圧迫して窒息死させた上で預金通帳3冊と印鑑、軽自動車を奪ったとしている。
愛香被告は、和美、岡村両被告が詐欺で得た金と知りながら、北九州市小倉北区の自宅で現金40万円を受け取ったとしている。捜査関係者によると、この40万円は和美被告が辻さんの預金から引き出した金の一部とみられる。強盗殺人容疑については処分保留とした。
ある捜査幹部は「岡村被告に言いくるめられ、和美被告は『一生、金を渡し続けなければならない』と思い込まされていたようだ。岡村被告と出会わなければ、路上生活をすることはなく、事件も起きなかったはずだ」と語る。いびつな友人関係を解消することはできなかったのか。全容解明の場は法廷に移る。【佐藤緑平、林大樹】

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