兵庫県立明石公園(明石市)内にある旧市立図書館が約3年半、活用されないまま空き施設となっている。公園を運営する県は都市公園法に基づき、2023年3月末までの土地の原状回復と返還を市に求めているが果たされず「不法占拠」状態が続いている。解体費約8億円がネックとされるが、維持管理のため年間約300万円が投入されている。
「もう何年もこのまま。草も生え放題で気味悪い。市はどうするつもりやろ」。園内を散歩していた高齢男性はこう語った。入り口には「立入禁止」と書かれたバリケードが置かれ、足を踏み入れることができない。雑草はあちこちで伸び放題になっている。2年前にはミイラ化した遺体も屋上で見つかった。明石署によると身元は県内の男性で、事件性はないとみられる。死後数カ月経過していた。
県立公園内「不法占拠」3年半
旧図書館は1974年、県の設置許可を得て開館した。鉄筋3階建て、延べ4987平方メートル。当初は同時開館した隣接の県立図書館が来館者への直接貸し出しをしておらず、それらサービスを補う施設として稼働していた。JR明石駅前の再開発ビルへの新図書館移転に伴い2016年10月に閉館。17年8月~20年3月、郷土史関連の資料を収める「あかしふるさと図書館」として期間限定で一部使われたが、老朽化などもあってその後は未使用のままだ。
県は21年10月、設置許可の更新期限となる23年3月までに土地を更地にして返還するよう市に文書で求めた。県が策定した「明石公園リノベーション計画」(21年3月)では大型バス駐車場を跡地に整備する案が盛り込まれている。
これに対し市は、当時の泉房穂市長や市幹部らが解体費を約8億円とする試算を議会に示し、「多額の負担であり、解体するだけでは市民の理解を得られない」「有効活用について県と協議する」などと答弁したが、具体策は上がらず、解決には至らなかった。
23年5月に就任した丸谷聡子市長は6月議会で「緑に囲まれ、アクセスもいい。市民や利用者にとっていい施設ができれば、公園全体の価値を高めることにもつながる」と活用について前向きな姿勢を示した。県との交渉を担う市企画・調整室は「何も生まないコストなので、この状態がいいとは思っていない」とし、活用の具体案について検討を続けている。国の補助活用なども模索する。
県公園緑地課は「市長が『公園の価値を高めるような』と言われているので、市から提案があれば県としても協議したい。市民のみならず県民が活用できるようなものを」と求めている。
公園を巡っては園内の明石城跡周辺の樹木を県が大量に伐採し、自然保護団体や市が中止を求めた経緯がある。伐採は中断され、団体や有識者、市も加わった部会で今後の管理方法について協議が続いている。【入江直樹】