福岡市のJR博多駅前で昨年1月、元交際相手の女性(当時38歳)を刺殺したとして、殺人罪やストーカー規制法違反などに問われた住所不定、無職寺内進被告(32)の裁判員裁判の第5回公判が24日、福岡地裁(冨田敦史裁判長)であった。検察側は論告で「強固な殺意で残忍極まりない一片の慈悲もない犯行」として、懲役30年を求刑。弁護側は同法違反については無罪を主張し、結審した。
起訴状では、寺内被告は2022年11月に同法に基づき、会社員川野美樹さんへのつきまとい行為などの禁止命令を受けていたが、23年1月16日、博多駅前の路上で帰宅する川野さんを待ち伏せして追いかけ、頭や首、胸や背中などを包丁で多数回突き刺して殺害したとしている。
検察側は論告で、寺内被告が川野さんと交際を始めてから束縛するようになり、交際を解消したいと告げられた後も納得せず不名誉な動画や写真を大量に送信したと主張。事件当日、川野さんからストーカーと指摘されたことに激高して、包丁で少なくとも17回刺し、最大で深さ約20センチの傷を負わせたと指摘した。待ち伏せしたうえでの犯行で、ストーカー規制法違反も成立するとした。
また、同法に基づく禁止命令などを受けていたにもかかわらず、従わずに待ち伏せて、殺人事件に至っており、「ストーカー規制法の趣旨を無意味にしかねない、重大な犯罪」と訴えた。
弁護側は弁論で事件当時、待ち伏せしていた事実はないと主張。殺人罪に関しては包丁は護身用に所持していたものだとし、「計画性はない」などと述べ、懲役17年が相当だとした。