日本の解き方 総裁選〝高市氏潰し〟の背景 党員の支持急伸、財務省や「親中勢力」には想定外 政治への女性進出に「ガラスの天井」も

自民党総裁選では、高市早苗経済安保相の政策リーフレット送付が問題視されたが、自民党の対処はひどかった。
高市氏が郵送したリーフレットについて、総裁選の選挙管理委員会は、9月4日に通知した「党員への文書の郵送などの禁止」に抵触したとして、口頭注意した。さらに、岸田文雄首相(総裁)ら執行部が追加対応を指示したと報じられた。選管は「再注意」はしなかったが、逢沢一郎委員長が「誤解や予断を持つことなく投票を」と声明を出した。
真相は、このリーフレットは8月1日には印刷・郵送業者に渡し、内容も今回の総裁選には言及しておらず、送付先は主に後援会だった。自民党議員の中からも、執行部による追加対応の指示には批判もあった。
さらに、他陣営では、9月4日以降にも総裁選に言及した文書の郵送が行われていたとネット上で騒ぎになった。これに対して、「高市氏の郵送は全国向けだ」という言い訳もあったが、発送枚数からみて県内の後援会向けが中心であった。となると、高市氏はルールを守ったが、ルールを破った他陣営もあったとの見方もできる。
他陣営の推薦人からは「高市氏が支持を伸ばしているのは、リーフレットを送付したためだ」という信じがたい主張も出たが、他陣営も文書の郵送を行っており、説得力に欠けている。
こうした「高市氏潰し」の背景には、高市氏が予想に反して党員の支持を集めたことがあるのだろう。日本テレビの党員調査の推移(9月3~4日、12~13日、21~22日)をみると、石破茂元幹事長は28%、25%、31%となった。高市氏は17%、22%、28%と急伸する一方、小泉進次郎元環境相は18%、19%、14%と伸び悩んでいる。石破氏と小泉氏の合計も最新調査時点で45%にとどまっている。
この動きは、霞が関でもかなり話題を呼んでいる。「高市氏は推薦人すら集められない」と事前に言われており、小泉氏で決まりというのが大方の政治評論家の意見だった。しかし、ふたを開けてみると、答弁力への不安もあり、急速に小泉氏への党員の支持は失速した。
高市氏への党員支持が拡大しているのは、財務省など霞が関にとって想定外の展開だ。中国に対して毅然(きぜん)とした態度を取るので、「親中勢力」からみても、高市氏の勢いは好ましくないだろう。さらに、政治の世界では、女性進出について「ガラスの天井」もある。邪推だが、こうした勢力が「高市氏潰し」の背景にいるのかもしれない。
一方、立憲民主党で野田佳彦元首相が新代表になったのは、財務省にとっては好都合だろう。これで自民党の次期総裁が高市氏以外の人であれば「消費税率15%」への道が開けるが、高市氏になると戦略は大きく狂う。マスコミの政治部でも高市氏を苦手にしている記者は多いと聞く。「高市氏は人付き合いをしない」と批判しているようだ。
こうした人たちは高市氏を歓迎しないというが、いずれも政策論とはほど遠いものだ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)

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