四谷大塚の盗撮問題 サピックスなど大手進学塾の対応は?

大手中学受験塾「四谷大塚」(本部・東京都中野区)で元男性講師が業務中、複数の女子生徒の下半身を盗撮した問題を受け、都内の大手進学塾<SAPIX(サピックス)><早稲田アカデミー><日能研>に聞きました。どのような対策を講じているのでしょうか。
今秋の臨時国会で、性犯罪歴のある人物が子どもと接する仕事に就くことを防ぐ仕組み「日本版DBS」の導入に向け、関連法案が提出される見通しです。関係者からは、学習塾も対象にするよう求める声も上がりました。【西本紗保美、宮城裕也】
毎日新聞の取材に対し、四谷大塚の広報担当者は「教室内にカメラを設置しておらず、講師らのスマートフォンの教室への持ち込みも制限していなかった」と説明。17日には再発防止策を発表した。保護者が授業をリアルタイムで確認できるようにシステムを導入する。都内の大手塾も対策をさらに強化するようだ。
サピックス「全教室95%にカメラ設置済み」
「SAPIX」(東京都渋谷区)は既に全教室の95%にカメラを設置しており、受付のモニターでリアルタイムに授業の様子を確認できる。
広野雅明教育事業本部長は「講師が『チェックされている』という意識を持つことで、授業の質を向上させる狙いがある」と説明する一方で、「生徒への不適切な行為の抑止力にもなると考えている」としている
今回の問題を受け、すべての教室にカメラを設置する方向で検討中。各校舎に対し、「講師らの教室内へのスマートフォンなど私物の持ち込み禁止の徹底」を改めて通知した。
「日本版DBS」に期待も
一方で、講師の採用について、広野部長は「面接時に性犯罪歴を聞いても事実を回答するとは限らない。プライバシーや人権の問題もあり、対応に苦慮している」と明かす。議論が進む「日本版DBS」について、「学習塾も含めて、公的機関が何らかの仕組みを作ってくれればありがたい」と期待する。
早稲田アカデミー「カメラの設置を至急検討」
早稲田アカデミー(東京都豊島区)は「各教室内へのカメラ設置を至急検討している」とメールで回答した。現在、カメラの設置は受付や出入り口付近など一部に限られているという。
講師らへのマニュアルで、生徒や保護者の体に触れるような行為を禁止し、1対1で面談や指導をする際には、死角となるような教室の使用は、事前承認を得るよう定めている。
「日本版DBS」の導入については、「(加盟する)全国学習塾協会が重要課題としており、その取り組みを支援する」とコメントした。
日能研「全教室にカメラを設置している」
日能研(横浜市)は、盗撮行為などの防止策として、「全教室にカメラを設置している」と回答。講師らにコンプライアンス研修を実施しているという。
「日本版DBS」巡り、署名活動
子育て支援などに取り組む認定NPO法人「フローレンス」(東京都)は10日から、日本版DBSについて保育園や学校に限定せず、子どもと関わる全ての職業を対象とするよう求めるオンライン署名を始めた。
開始翌日に元講師の盗撮問題が発覚したこともあり、署名は18日現在で6万7000筆を超えた。
署名サイト「Change.org」には、賛同者から「子どもを標的にした性犯罪が多い今、娘や息子に習い事をさせたくてもいろいろと考えてしまい、踏み出すことが難しい」「スイミングスクールやベビーシッターなどでも性被害が起きているのに、DBSの対象から外したのでは子どもたちを守れない」などのコメントが寄せられている。
フローレンスは2017年以降、ベビーシッターによる子どもへの性犯罪や、過去に性加害を犯した教員が放課後等デイサービスなどに再就職した事例が発覚した際などにDBSの導入を訴えてきた。
今回集まった署名は8月末をめどに国に提出する予定だ。広報担当者は「DBSがあれば、(子どもと関わる)事業者や雇用される側は問題がないことの証明になり、利用者の安心につながる。対象となる職業を制限することは制度を骨抜きにしかねない」と危機感を募らせている。

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