「不起訴前提の取り調べ行われた」…元広島市議への判決で裁判長が言及

2019年の参院選を巡る大規模買収事件で、河井克行・元法相(60)(実刑確定)から現金を受け取ったとして、公職選挙法違反(被買収)に問われた元広島市議・藤田博之被告(85)の判決が31日、広島地裁であり、後藤有己裁判長は、被告に対する東京地検特捜部などの取り調べに言及し、「不起訴を前提として行われた」と指摘した。
藤田被告が元法相から買収資金を受領したことは客観証拠で明らかだとして、罰金40万円、追徴金70万円(求刑・罰金70万円、追徴金70万円)の有罪とした。
事件を巡っては、同じく被買収罪に問われた元広島市議・木戸経康被告(68)(公判中)に特捜部検事が不起訴を示唆して供述や証言を誘導した疑惑が録音データから判明している。
公判で藤田被告側は、「検事から取り調べで『今回は何もなしで済むが、今度やったらだめですよ』と言われた」などとして、「違法な司法取引があった」と主張し、裁判の打ち切り(公訴棄却)を求めていた。藤田被告は7月13日の被告人質問で、弁護側の質問に「『市議会の重鎮議員だから頑張ってほしい』と何回も言われ、不起訴で終わると強く思った」と述べた。
判決は、「検事は不起訴を前提として取り調べを行い、被告は不起訴を期待して意に沿う供述をしたことは否定できない」と認定。一方で「公訴を棄却すべきほどの違法性はない」として被告側の訴えを退けた。
判決によると、藤田被告は元法相の妻・案里元被告(49)(有罪確定)を当選させるための報酬と知りながら、19年3月に50万円、同6月に20万円をそれぞれ受け取った。被買収罪で公判が開かれた地元政治家12人のうち1審で有罪判決が言い渡されたのは7人目で、不起訴を前提とした捜査に言及した判決は初めて。

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