悪質「韓流アートメーク」 横行する出稼ぎ韓国業者のヤミ施術の実態

針で眉などに色素を入れる医療行為のアートメーク。「化粧の手間が省ける」といった理由で人気を集める一方、無資格の違法施術が後を絶たない。中でも、近年は美容大国・韓国の悪質業者による「闇営業」が横行しているという。交流サイト(SNS)で客を募り、民泊を利用して違法施術する―スタイルで、警察当局も実態把握に苦慮する。専門家は「不衛生な環境や未熟な施術技術の場合は感染症のリスクもある」と警鐘を鳴らす。実態を探った。
安価にひかれ…
《美容大国・韓国のアートメーク専門です。眉のカスタムとか受け付けます》
アートメークを受けようと考えていた大阪市東住吉区の介護福祉士の女性(53)は昨年11月、韓国語交じりの日本語でこんな投稿をしているインスタグラムのアカウントを見つけた。
プロフィル欄には韓国人の名前が書かれ、アートメークに精通しているような印象を受けた。
なにより料金が魅力的だった。国内のクリニックなどでアートメークの施術を受けた場合、眉や唇、アイラインはそれぞれ10万円前後が相場。しかし、このアカウントでは高くて4万~6万円とうたっていた。
施術希望のメッセージを送った女性の元に数日後、施術場所として送られてきた住所は、大阪市内の民泊マンションの一室だった。中に入ると、スタッフは片言の日本語を話す案内役の女性と、韓国語しか話せない施術担当の女性の2人のみ。それでも待合室になっていた部屋には、若者から中年まで4、5人の女性がいた。
眉に麻酔薬を塗布されスタートした施術は約1時間半程度で終了。現金4万円を支払った。炎症など肌のトラブルが起きた場合の対処を聞くと、スタッフは「病院に行って」と一言。数日後、アカウントを確認すると削除されていた。
「施術が失敗しても泣き寝入りするしかなかった」と後になって気付き、怖さを感じた。
「闇営業」実態不明
厚生労働省は、アートメークを医療行為と位置づけている。施術は医師か、看護師らが医師の指示のもとで行う。たとえ韓国で医師免許を持っていたとしても日本で施術した場合は医師法違反に該当する。
大阪市でアートメークの施術を提供している医療関係者によると、韓国の業者による違法施術は、数年前から東京や大阪など都市部を中心に増え始めているという。
業者の多くは韓国の美容クリニックのスタッフと称してSNS上で集客。民泊やホテルを施術場所とし、1日に複数人に施術して短期間のうちに帰国する。
摘発を免れるため、定期的にアカウントも変更しており、実態をつかむのは難しい側面もあるが、大阪府警の捜査関係者は「野放しにしておくわけにはいかない。情報収集を急ぐ」とする。
「医療行為の認識を」
「アートメークは医療行為。安さや宣伝文句に惑わされず、医療機関で施術してほしい」。アートメーク事情に詳しい「日本メディカルタトゥー協会」(名古屋市)の釜山(かまやま)美保代表理事はこう訴える。
美容熱の高まりとともに国民生活センターに寄せられたアートメークを含む美容医療に関する相談件数は年々増加し、令和3年度は2766件で過去最多を記録。4年度も2532件と高止まりの状態だ。アートメークの相談内容は施術後に化膿(かのう)したり、長期間腫れたりといったものが多いが、角膜を損傷したという重篤なケースもある。
釜山さんは「衛生管理が不十分な機材や室内での施術は感染症のリスクがある」と指摘。麻酔や色素にアレルギー反応が出る人もいるため、「適切な薬や処置を施せる医師の監督は必須だ」としている。(土屋宏剛)

アートメーク 眉やアイラインなどに麻酔を塗った後、専用の針に付着させた色素を皮膚の表層部に入れる医療行為。2、3年間で色が薄くなる。

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