福島第一原発の処理水を「汚染水」と発言し、謝罪と撤回をした野村農水大臣。この発言について中国政府は「撤回すべきなのは海洋放出だ」と主張しました。一方、韓国は市民の水産物の買い控えを懸念しているとみられ、政府として「汚染水」の名称変更を検討しているといいます。岸田首相は野村大臣を続投する考えを示しました。
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9月1日、福島の海で解禁された底引き網漁。いわき市の小名浜漁港には「常磐もの」の代表格、メヒカリやスルメイカなどが水揚げされました。
福島の漁師 志賀金三郎さん
「ああいう偉い人が『汚染水』って言ったら、中国笑っているでしょうが。その人が風評払拭だなんて言って本当にやってくれるの? 心配だよ、漁師は」
その、心配な「偉い人」というのが、8月31日に「処理水」を「汚染水」と発言した野村農水大臣(79)です。
野村農水相
「全面的に謝罪して撤回をいたしたいと思います」
「言い間違いだった」と発言を撤回、謝罪しましたが、視線は終始、下向き…。台に置かれた原稿を読んでいるように見えます。
発言から、一夜たった9月1日。記者がこの点を指摘しました。
――謝罪のコメントを、下を向いて原稿を読みながらしているように見えてしかたないが。
野村農水相(79)
「顔を上げて言えばよろしかったんでしょうけども、 私は時々、口が滑ってしまう恐れがあるので昨日は(紙を)読ませていただいた」
“また口を滑らせないため”だったと弁明しました。
岸田首相は1日夜、野村大臣を続投させる考えを示しています。
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「処理水」を「汚染水」と呼ぶ中国。中国のSNSに投稿された動画には、貴州省の日本料理店のオーナーだという男性が、自分の店の内装を次々とはぎ取っていく様子が映っていました。
料理店のオーナー(8月25日投稿)
「毒の水(処理水)については私が説明する必要はないでしょう。もうやめます」
日本料理店をやめて、中国風の居酒屋に作り替えるのだといいます。
野村大臣の「汚染水」発言は、中国政府の耳にも届いています。
中国外務省 報道官
「“汚染水”と言うのは、(野村大臣が)事実を言ったにすぎない」
「日本側が本当に撤回すべきなのは、核汚染水の海洋放出を強行した誤った決定ではないか」とも述べました。
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同じく「汚染水」と呼んでいる韓国では、変化の兆しが…。
韓悳洙(ハンドクス)首相
「正確に言えば、科学的に処理された汚染水です」
“ALPSで科学的に処理”されていることを強調。政府として名称変更も検討していることを明らかにしました。そのわけは、韓国国内での“水産物の買い控え”への懸念です。
ソウル市民
「刺し身やすしが好きだったけど、あまり食べなくなりそう」
水産市場関係者
「お客さんがいなくなりました。だいぶ減りました」
8月31日、尹錫悦(ユンソンニョル)大統領も市場を訪れ、自ら刺し身を食べるなど、不安払拭に動いています。
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一方、中国の国番号を表す「86」で始まる“嫌がらせ”などの電話の問題が全国で確認されています。
電話の音声を再生(千葉県内)
「あなたがた日本はナゼ核廃水を排出したのですか?」(機械音)
都庁にも、処理水放出後の1週間で約3万4000件の電話が。東京都によると、多くが中国語でまくし立てるようなものや無言電話だということです。
1日、環境省は2回目の海域モニタリング結果を公表。今回もトリチウムの濃度などが検出できる下限を下回っていたということです。
(9月1日放送『news zero』より)