元広島市議「罪に問わないと言われ信用」 河井元法相買収公判

2019年の参院選広島選挙区を巡る大規模買収事件で、元法相の河井克行元衆院議員(60)=実刑確定=から現金を受け取ったとして、公職選挙法違反(被買収)に問われた元広島市議の公判が30日、広島地裁(後藤有己裁判長)であった。元市議は任意の取り調べで東京地検特捜部の検事に供述を誘導されたと訴えており、この日の被告人質問で「検事から『罪に問わず、議員も続けられる』と言われ信用し、供述調書に判を押した」と述べた。
元市議の木戸経康(つねやす)被告(68)は現職だった19年4月、元法相の妻、案里元参院議員(49)=有罪確定=を当選させるための報酬と知りながら、現金30万円を受け取ったとされる。元市議は捜査段階で容疑を認めたが、公判では無罪を主張している。
元市議は20年3~6月に同じ検事から任意聴取を受けた際、やりとりを録音。このデータによると、検事は元市議に対し、関与を認めれば不起訴とする可能性に言及していた。
この日の被告人質問で、元市議は取り調べの様子を語った。検事からは「元法相を逮捕するための捜査で、あなたには関係ない」と告げられたという。質問に黙っていると、「否認ですね。家宅捜索などの強制捜査が入るよ」と畳みかけられ、「逮捕されると思い、従うしかなかった」と述べた。検事は不起訴を示唆する一方、取り調べが終わると「不起訴は確約できない」と話したといい、「こういうやり方なのかと思った」と振り返った。
元市議は元法相から現金入りの封筒を渡された状況についても説明。現金と分かったのは後日だったとしたうえで、選挙協力の報酬だったとの検察側の指摘に対しては「全くそう思わなかった」と話した。
この公判では、元市議の供述調書や録音データは証拠として取り扱われていない。弁護側は取り調べの違法性を明らかにするため、検事の証人尋問を申請していたが、後藤裁判長は採用しなかった。
「検察の捜査に恐怖を感じた」
閉廷後、元市議はこの問題が7月に浮上してから初めて記者会見に臨んだ。元市議は「検察の捜査に恐怖を感じた。自分が言ってもないことを言った、やってもないことをやったと何度も繰り返され、自己防衛のために録音した」と話した。【安徳祐、根本佳奈、矢追健介】

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