岩手県大槌町の平野公三町長は5日の定例会見で、町が主催して8月に実施した東日本大震災の語り部活動で防災上不適切な内容があったと明らかにした。当時の防潮堤が発生直後の津波警報より高かったことを挙げ「それで逃げているようなら毎回逃げないといけない」と、すぐ避難しなくてもよいと受け取られかねない発言をしたという。
気象庁は現在、津波警報以上で即時避難を呼び掛けている。発言後、町議会関係者が問題視した。平野町長は会見で「語り部活動について慎重に再検討する」と述べた。
語り部活動は8月13~15日に実施した町の震災伝承行事の一環で、町職員28人が犠牲になった旧役場庁舎跡で開かれた。町が伝承活動を委嘱した地域おこし協力隊員と町職員が説明し、県内外から訪れた計5人が参加した。
町が不適切と判断したのは、協力隊員が震災直後の状況を説明した内容の一部。隊員は気象庁が当初、高さ3メートルとする津波警報(大津波)を出したことに触れ「3メートルの津波どう思われますか。当時の防潮堤の高さは6・4メートルで結構高いです。逃げるという考えは」と尋ねた。1人が「最初はない」と答えると「最初はそうですね。それで逃げているようなら毎回逃げないと」と話した。
町によると、この他、低地にあった旧庁舎前に災害対策本部を設置した点など、協力隊員の説明に問題点が少なくとも計3カ所あったとした。
町は協力隊員に町の公式文書に基づいて話すよう求めていたが、事前に内容を把握していなかった。今回の説明を精査し、他に問題点がないか確認するという。【奥田伸一】