新型コロナウイルスの流行が収まる気配がない。厚生労働省は8日、8月28日~9月3日の1週間で報告された全国の患者数は、1医療機関当たり20・50人だったと発表した。3週連続で増えていて、5月に感染症法上の位置づけが5類に移行してから、初めて20人を上回った。
患者数、3週連続で増加
今月7日にはオミクロン株の新たな派生型「BA・2・86」系統が国内で初めて確認され、専門家らは注視している。
8月28日~9月3日の1週間の患者数は、37都道府県で前週を上回っていた。最も多かったのは岩手県で35・24人。次いで宮城県32・54人、秋田県30・61人と続いた。
東京都は17・01人だった。ただ、60歳以上で見ると2・87人で、流行の第8波のピーク時(2022年12月、都の推計で1・95人)を上回っていた。
都内では社会福祉施設や保育所を中心に集団感染も相次ぎ、前週より1・39倍の82件に上った。東京消防庁によると、新型コロナや熱中症の患者の増加で119番通報がつながりにくくなっている。
感染症に詳しい東京医科大の濱田篤郎特任教授は「暑さで換気されていない屋内にこもる人が多かったことなどが、感染増加に影響した可能性はある」と分析する。
一方、国内で初めて確認されたオミクロン株の新たな派生型「BA・2・86」系統は、南アフリカなどで確認されている。国際データベース「GISAID」によると、8日までに世界で71件検出されている。現在、国内で流行している派生型「XBB」系統と比べて多数の変異があり、重症度の変化や感染力は明らかになっていない。
「XBB」と「BA・2・86」の差について、濱田さんは「デルタ株とオミクロン株くらいの違いがあり、BA・2・86は免疫をすり抜ける力が高い可能性がある」と指摘する。
国内では、今月20日に秋接種が始まる。使われるワクチンは「XBB・1・5」系統に対応するが「もしBA・2・86が今後広がれば、秋接種のワクチンがあまり効かない可能性はある」と警戒する。ただ、重症化の予防効果は期待できるといい「まずは現在の流行を抑えるためにも、ワクチン接種を検討してほしい」と呼びかけている。【寺町六花】