東京電力福島第1原発にたまる処理水を巡り、福島県などの住民や漁業者ら約150人が8日、国と東電を相手取り、8月24日に始まった海洋放出の差し止めを求める訴えを福島地裁に起こした。原告側弁護団によると、処理水放出の差し止めを求める提訴は全国で初めて。10月末には原告を追加して第2次提訴を予定している。
訴状によると、原告側は、原発事故によって発生した放射性廃棄物の意図的な放出は市民が平穏に生活する権利を侵害し、漁業関係者らのなりわい回復を困難にすると主張。関連設備の検査を合格とした国(原子力規制委員会)の処分の取り消しや、東電の放出停止を求めている。
提訴後、原告らは記者会見に臨み、思いを述べた。同県いわき市に住む織田千代さんは「身近にある海を放射能で汚さないでというのは当たり前の声。一刻も早く海洋放出をストップしてほしい」と訴えた。同県大熊町から新潟県に避難している大賀あや子さんは「事故現場と放射性廃棄物が安全に管理され、被害者の被害回復が進むことを望んでいる」と語った。
弁護団共同代表の河合弘之弁護士は「放射性物質を海洋に流すのは極めて不道徳なこと。勝つまでやる」と話した。
東電は「現時点で訴状が届いていないため、訴状が届き次第内容を確認した上で適切に対処していく」とコメントした。【松本ゆう雅】