異例…取り調べ時の『録音・録画』の提出命じる 無罪判決の前社長が賠償を求めた裁判

土地取引を巡る横領事件で、大阪地検に逮捕・起訴されたものの無罪判決が確定した不動産会社の前社長が求めている、「取り調べ時の録音・録画の提出」。9月19日、大阪地裁は国に取り調べの録音・録画の提出を命じる決定を下しました。 「プレサンスコーポレーション」の前社長・山岸忍さん(60)は、学校法人明浄学院(現・学校法人大阪観光大学)の土地取引をめぐる横領事件で、元部下らと共謀したとして、2019年12月に大阪地検特捜部に逮捕・起訴されました。 しかし大阪地裁は2021年10月、特捜部が共謀の根拠とした元部下の供述について、「検察官の(恫喝的な)発言が、元部下に真実とは異なる供述をする強い動機を生じさせかねないものだった。供述内容の真実性に疑いが残る」として、山岸さんに無罪を言い渡し、翌11月に判決が確定しました。 山岸さんは2020年8月に保釈されるまで、約250日間も大阪拘置所に勾留されました。 山岸さんは「重要な客観的証拠を無視し、供述を強要した結果生じた『冤罪事件』だった。長期間身体を拘束され、社長の地位も失うなど、多大な肉体的・精神的苦痛、経済的損害を被った」として、2022年3月、国に対し7億7000万円の賠償を求め提訴。その訴訟の中で、山岸さん本人やその部下らが特捜部の取り調べを受けた際の録音や録画の全記録を証拠として提出するよう求めていて、大阪地裁に対しても国に提出を命じるよう申し立てていました(文書提出命令の申し立て)。 国側は、取り調べでの一部のやり取りを文字に起こした文書(反訳書)を提出したものの、山岸さん側は「反訳書にはマスキングが施されていて、都合の良い部分のみを恣意的に取り出している」「取り調べの是非は、声の大きさやトーン、表情や動作など非言語的要素も含めて判断されるべきで、そのためには可視化媒体が必須だ」と主張してきました。 山岸さんの代理人によりますと、国側は「第三者に閲覧させたり提供したりしない」などの条件付きであれば録音・録画を提出する意思を示したものの山岸さん側がそうした条件は受け入れられないと伝えると、提出を拒否したということです。 9月19日、大阪地裁は国に対し、特捜部が行った元部下の取り調べの録音・録画を、証拠として提出する命じました。

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