36人が死亡、32人が重軽傷を負った2019年7月の京都アニメーション放火殺人事件で、殺人罪などに問われた青葉真司被告(45)の裁判員裁判の第8回公判が20日、京都地裁(増田啓祐裁判長)であり、遺族による被告人質問が初めて行われた。妻を亡くした男性(50)が犠牲者に家族がいることを知っていたか尋ねると、青葉被告は「申し訳ございません、そこまで考えなかったというのが自分の考えであります」と語った。事件に関連する事柄で青葉被告が謝罪の言葉を口にするのは初めて。
青葉被告が小説を執筆するきっかけとなった京アニ作品「涼宮ハルヒの憂鬱(ゆううつ)」で、総作画監督だった寺脇(池田)晶子(しょうこ)さん=当時(44)=の夫が最初に質問に立った。夫は「あなたには事件を起こすまで、(周囲に)相談できる友人はいましたか」と問いかけると、青葉被告は「基本的にありません。自分の問題は自分で片付ける方針でした」と答えた。夫は紙を手に持ち、声を震わせながら質問を読み上げた。
遺族の被告人質問は、被害者参加制度に基づいて実施された。
これまでの公判で青葉被告は、09年に小説を書き始めた経緯について、「涼宮ハルヒの憂鬱」を見て「こんなすごいアニメがあるのか」と思い、同作品の原作となったライトノベルの文体をまねて執筆したと説明。7年かけて長編小説「リアリスティックウェポン」を完成させた時は最高のシナリオができたと考え、アニメ化も夢見て京アニの小説コンクールに応募したものの落選。「裏で手を動かす人がいる。そこまでやられたらどうしようもない。京アニへの怒りはかなりあった」などと述べていた。