36人が死亡し32人が重軽傷を負った令和元年7月の京都アニメーション放火殺人事件で、殺人罪などに問われた青葉真司被告(45)の裁判員裁判の第8回公判が20日、京都地裁(増田啓祐裁判長)で開かれ、被害者参加制度を利用した遺族らによる直接の被告人質問が始まった。犠牲者の一人で、アニメーター(作画担当)を束ねる「大黒柱」として活躍した寺脇(池田)晶子さん=当時(44)=の夫が法廷に立ち、「池田晶子は今回の事件のターゲットだったのか」などと被告に問いかけた。
寺脇さんは、京アニの代表作である「涼宮ハルヒの憂鬱(ゆううつ)」や「響け!ユーフォニアム」シリーズで、キャラクターデザインや作画監督を束ねる総作画監督を担当。丁寧な仕事ぶりで高い評価を受ける京アニの作画品質の高さを支えたほか、子育てと仕事の両立に奔走していた。
検察官の横に立ち、「青葉さん」と呼びかけた夫。まず「困ったときに相談する相手はいなかったのか」と問うと、被告は「相談する相手はいなくて自分で解決しようとした」などと答えた。
夫は続いて「池田晶子は事件のターゲットだったのか」「事件の対象には子供がいる人もいると知ってやったのか」と時折、声を詰まらせながら尋ねると、被告は淡々とした様子で「個人ではなく、京アニを狙った」「申し訳ございませんが、(子供がいる人がいたかどうか)そこまで考えなかった」と述べた。
これまでの公判で被告は犯行を認めた上で、自身の小説が京アニにパクられたと思ったことが動機の一つだと説明。精神疾患の影響による心神喪失か心神耗弱の状態だったとして無罪、または刑の減軽を求めている弁護側に対し、検察側は被告が小説のコンクール落選を機に「筋違いの恨みによる復讐(ふくしゅう)」を決意したと指摘している。