岸田文雄首相が行った内閣改造・自民党役員人事(13日)に対し、世論の反応が芳しくない。産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)の調査で内閣支持率は前回調査から2・6ポイント下落し、毎日新聞の調査で1ポイント減、2社の調査で横ばいだった。
効果が出ていない一因には、改造の「継ぎはぎ」「パッチワーク」感が、国民に見透かされていることがあるのではないか。
今回の内閣改造の「売り」の一つとして、過去最多に並ぶ女性閣僚5人を登用したことがある。岸田首相は13日、「女性ならではの感性、共感力を十分発揮してもらいたい」と述べた。
ところが、15日に行われた副大臣・政務官人事で「女性はゼロ」だった。政治の世界で、ジェンダーギャップの解消を図りたいという思いが、岸田政権に「本当にあるのか」と疑問を持たざるを得ない。
同じようなバランスの悪さは、ほかにもある。
LGBT理解増進法の成立などに不満を持った保守層に配慮し、人気の高い高市早苗経済安全保障担当相を留任させ、安倍晋三元首相が強い期待を寄せていた木原稔氏を防衛相に起用した。保守層から「親中派」と指摘されていた外相の林芳正氏を退任させた。
だが、保守派が重視する外交・安全保障問題で、改造を通じて何をやりたいのかがいまひとつ伝わってこない。このため保守層から高い評判の声は、いまだ聞こえてこない。
女性登用や保守派に対する配慮、今の政治家に欠けている「胆力」を持つ上川陽子外相の抜擢(ばってき)など、考え抜いたと思われるポイントはあるものの、よく見ると取りこぼしがある。今回の内閣改造には、そんな残念な点が目立つ。
改造に「継ぎはぎ感」が見える原因には、岸田首相が派閥の顔色をうかがい過ぎたことがあるのではないか。
通常、内閣改造・自民党役員人事での派閥との折衝は、新聞の「首相動静」に残らないよう、電話や公邸など「裏ルート」で行うことが多い。
ところが、岸田首相は11日、安倍派の萩生田光一政調会長と2回面会したのをはじめ、各派閥の有力者と相次いで会っていた。各派への配慮を堂々と宣言するような行為で、極めて異例の動きだ。
その結果、派閥が要請してきた人物をそのまま入閣させたケースも多く、岸田首相が「考え抜いたポイント」と、「受け身な部分」が同居する、不可思議な内閣改造が実施された。
第二次安倍政権時代にも、派閥に気を配った内閣改造が行われたことがある。
安倍氏は当時、「政権に体力があるときには、入閣待機組にポストを与えるのも指導者としての役割だと、おやじ(晋太郎元外相)を見て学んだ」と話していた。