岸田首相は、衆議院、参議院の本会議で所信表明演説を行い、物価高に対応する、経済対策を打ち出しました。首相の所信表明演説には、「国民に還元」という言葉がありました。具体的には「所得税の減税」が検討されるということですが、実現するのでしょうか?
これまで首相自らが打ち出した政策は、実現したケースが多いと思いますが、今回は、すんなりいくか、見通しは立っていません。というのも、野党だけでなく、与党内からも反対論が多いからです。
ある自民党幹部は「財政状況を考えれば減税などできない」と話しています。さらに今回の特徴は、岸田首相に近い議員までもが否定的な点です。
ある首相側近議員は「どういう理屈で説明するか不安だ」と話すなど、ネガティブな姿勢を示しています。
ーーなぜ首相に近い人まで反対してるんでしょうか?
取材をしていますと「政策として筋が悪い」と話す議員が多いです。「筋が悪い」という理由は何か。大きく2つあります。
1つ目は「政策の整合性」という点です。ある首相側近は「防衛増税と言ってる中で、減税というのは説明がつかない」と指摘しています。
2つ目は「政策の効果」です。減税は「即効性がない」と言われます。実際に減税が実感できる時期について、ある財務省幹部は「早くても来年の半ば」と話しています。であるならば、より早く効果が出る「現金などの給付措置」の方が「効果的」という主張です。
ーーこの「減税」の打ち出しは、岸田首相が「衆議院の解散」をねらっているという見方もありますが、実際はどうなんでしょうか?
そうなんです。ある側近議員は「所得減税を言い出したのは、解散を意識している」とハッキリ言っていました。
岸田首相周辺も「解散についてはドラスティックな事を考えている」と話すなど、「年内解散」の可能性も完全に排除されていません。
一方で、22日に行われた衆参の補欠選挙は1勝1敗でした。
政権への評価の低さがあらわになった形で、「解散どころではない」との声も多くあります。
所得税減税という政策の実現と、解散戦略をどう両立させるのか。岸田首相にとっては厳しい局面が続きそうです。