自民党最大派閥の安倍派(99人)で、集団指導体制への不満がくすぶっている。内閣改造・党役員人事で中枢を担う「5人衆」がそろって要職にとどまり、中堅若手からは「ポスト配分が停滞している」との声が上がっている。来年の総裁選に向け、派閥の結束をどう維持するかが課題となりそうだ。
安倍派は21日、党本部で常任幹事会を開き、派内人事を決定した。事務総長に高木毅国会対策委員長、参院安倍派(清風会)会長に世耕弘成参院幹事長を引き続き充てる。15人の常任幹事会メンバーから外れた下村博文・元政調会長は顧問とした。
塩谷立座長は記者団に対し、「体制を変えると、色々な面で問題が出てくる可能性もあり、今の体制をある程度堅持する」と説明した。
鈴木総務相、宮下農相の初入閣については、「最優先でお願いしていた。非常に満足している」と評価しつつ、「もう一人、二人増えてもいいだろうと交渉したが、もう一歩だなという思いだ」と反省を口にした。
実際、松野官房長官や西村経済産業相、萩生田政調会長らが続投したことを巡り、「5人衆の優遇人事で、派閥内の新陳代謝を図る努力が足りなかった」などと、人事の固定化に不満を抱く議員は多い。
20日には、土井亨衆院議員の派閥退会が発表された。安倍晋三・元首相の死去後、1年以上たっても後継会長を決められないことへの不満や、森喜朗・元首相に近い5人衆への反発があるとみられている。
安倍派では当面、衆目の一致する会長候補がいない状況が続くとみられ、総裁選への対応も不安要素だ。西村氏は将来の出馬に意欲を示しているが、総裁候補の選考に着手すれば、対立の火種となる恐れがある。ベテラン議員は「今こそ団結を強め、退会者が次々出るような事態だけは避けなければいけない」と語った。