文部科学省は、不登校生ら多様な生徒の学び場として急増している通信制高校について、設置する際の審査基準を初めて設ける方針を固めた。通信制高校は20年間で2倍以上に増えたが、一部では不適切な教育活動も見られる。同省は教育の質を確保するため、審査基準を都道府県に示し、設置認可の厳格化を図る。
通信制高校については、国はこれまで省令で校舎の面積や設備といった最低限の要件を定めていただけで、具体的な審査基準を示していなかった。
通信制高校は戦後、働く若者に教育の機会を提供するために制度化された。近年では不登校の受け皿としての需要が高まり、2003年の構造改革特区で株式会社による学校運営が認められて以降、急増。当時の138校から今年5月1日現在は288校と増え、現在も新設が続いている。
だが、15年には株式会社立の「ウィッツ青山学園高校」(三重、17年閉校)による国の就学支援金の不正受給や不適切な教育活動が発覚。その後の同省などの調査でも、単位修得に必要な面接指導(スクーリング)の未実施や教員以外による添削指導など複数の通信制高校で不適切な教育活動や学校運営が確認されている。
このため、同省は都道府県による設置認可を厳しくする必要があると判断。同省が示す審査基準は、▽教育計画や年間行事などの「通信教育実施計画」を定め、公表▽適切な定員の設定▽教育・保健衛生上適切な立地▽「学校いじめ防止基本方針」や「危機管理マニュアル」の策定▽既存の高校と類似しない学校名――などを想定。年内にも基準を作成し、都道府県に示す。
また、本校の所在地以外で面接指導を行う「サテライト施設」は本校所在地の都道府県の目が届きにくく、設置先の自治体も所在や教育内容の把握が難しかった。そのため、通信制高校が施設を設ける場合には設置先の都道府県の意向を踏まえることも基準に盛り込む。
同省は基準とは別に、本校所在地の自治体と設置先の自治体が合同でサテライト施設を指導監督できる仕組みも設ける。