高価な果物の窃盗事件が各地で相次いでいます。8月には佐賀県伊万里市の果樹園でも高級ブドウが大量に盗まれ、農家は対策に頭を痛めています。
◆「まさかここまでやられるとは」
フルーツの産地として知られる佐賀県伊万里市の南波多町で8月25日、収穫直前のシャインマスカット約300房が盗まれました。被害額は75万円にのぼりました。
高田農園 高田文和さん「警戒はしていたが、まさかここまでひどくやられるとは。ふざけるなと言うか憤りと言うか、『やめてくれよ』って感じ」
◆手口は「プロ」
被害があった畑には、犯行の手口を伺わせる形跡が残されていました。
高田農園 高田文和さん「確実に人間が手で(袋を)破って、引っ張って味見して食べている。で、おいしかったから『ここら辺いけ』って全部盗った。いっぺんに」
収穫時期を迎えていないものには手がつけられず、実が熟したものだけがきれいに盗られていました。出荷直前の、すぐに売ることができる状態の物を選んでいること、大量に盗んだ物を売りさばく流通経路を知っていることを考えると、「プロ」の仕業だと思われます。
高田農園 高田文和さん「プロですよね、プロ。同業者か、本当に精通した人。狙って大きいのを取っている」
◆「不審な車を夜間に見かけたら通報を」
盗まれた果物の多くが卸売業者に横流しされたり、フリーマーケットアプリで転売されたりしていますが、犯人につながる手がかりが少なく、検挙に至るのはわずかだということです。
この地区では約1年前にも別の果樹園で45万円相当のシャインマスカットが盗まれ、警察もパトロールを強化しています。
警察の呼びかけ「もし不審な車など夜間に見かけられたら、警察に通報していただけると助かります」
◆夜間の見回り…睡眠不足に
高田さんも盗難被害のあと、見回りの回数を増やしました。
高田さん「息子が12時55分に(回って)、おれが午前3時ごろに見回り中にしている。そんな感じですね」
しかし、収穫や出荷作業もあるため、休む暇もなく、心身ともに疲弊していると話します。
高田農園 高田文和さん「もう限界かもしれないですね…。だから息子と交代で、ぼくの寝る時間は息子が起きておく」
◆全国で相次ぐ果物の盗難被害
2年前に群馬県太田市の果樹園で撮影された防犯カメラの映像。午後7時半ごろ、怪しげな2人組が突如、畑に現れました。そして、しばらく畑の様子をうかがったあと、カメラから姿を消しました。しかし、約8分後に再び姿を現すと、ブドウの入った袋を持って逃げるように果樹園を後にしていきました。2人組は今も検挙されていないということです。
◆「泥棒は必ず下見に」
福岡市博多区にある防犯機器の販売会社は「果物の盗難被害を防ぐには、防犯カメラを設置するだけでは難しい」と言います。
防犯設備士の資格を持つセキュリティハウスTOP 小山和茂さん「(防犯カメラは)抑止にはなるんですけど、泥棒は下見をしますので、下見の段階でカメラが付いている、付いていないというのは見ている。黒い服装でマスクをして、帽子を深めに被られるとやはり特定ができない」
そこで必要なのが、「狙われない環境」を作ることだと話します。
セキュリティハウスTOP 小山和茂さん「上下2段遮断した時に初めて人が遮断した、侵入したという判断をする」
◆センサーが侵入を検知
赤外線センサーを活用した防犯機器が、敷地内への侵入を検知すると……。
「機械警備を実施しています」
大きな警報音で侵入を知らせます。そして、登録した携帯には、着信と映像が瞬時に来る仕組みとなっています。
携帯着信「赤外線異常、発生しました」
セキュリティハウスTOP 小山和茂さん「センサーの反応から、ほぼずれなくダイヤルが始まって、瞬時にお客さまの携帯が鳴る。赤外線や威かく機器、防犯ライト、カメラを使うことで犯罪を起こさせない。下見をする泥棒が嫌がるか、『ここはやめておこう』という環境をいかに作るかということが大事になる」
こうした防犯システムを導入するには多額の費用がかかるうえ、被害を完全に防げるとは限りません。丹精込めて育てた果物を収穫直前に盗まれる農家はその対策に頭を悩ませています。