自民党の石破茂元幹事長が23日、テレビ番組で来年秋の自民党総裁選への出馬の意向を問われ、「首相は国会議員の中から選ばれる。準備をしておくのは、国会議員たる者(として)当たり前だ」と述べ、出馬への意欲を示した。
岸田文雄首相が年内の解散をしないとすれば、政局は来年の総裁選に向けて新たな局面に入る。石破氏の発言は、いち早く「ポスト岸田」への名乗りを上げ、主導権を握ろうとの思惑があるのだろう。しばらく鳴りを潜めていたが、いよいよ「再起動」というところではないか。
石破氏は、これまで4回の総裁選出馬経験を持つ。
初出馬は、福田康夫首相の退陣に伴う2008年の総裁選。この時は、立候補者5人中最下位だった。2回目の挑戦となった12年の総裁選では、第1回投票で1位を獲得した。決選投票で安倍晋三氏に敗れたものの、圧倒的な地方票を獲得したことを受け、幹事長に就任。民主党から政権を奪還した自民党を、安倍氏とともに取り仕切った。
15年の総裁選は立候補を見送り、3回目の挑戦は18年だった。「安倍3選」に異を唱え、安倍政権への批判を展開したが、思ったほど地方票が伸びず、一敗地に塗(まみ)れた。4回目は安倍氏退任に伴う20年だ。菅義偉氏、岸田文雄氏とともに出馬したが、最下位に終わった。
前回の21年は、自身は立候補せず、河野太郎氏を小泉進次郎氏らとともに担いだ。それぞれの名字の一字を取って「小石河」連合といわれ、国民的人気を背景に健闘したが、決選投票で岸田氏に敗れた。
石破氏は8月、岸田首相と夕食を共にした。「入閣の打診があったのでは」とも噂されたが、9月13日に発足した第二次岸田再改造内閣での起用はなかった。
もっとも、石破氏は「閣僚か党役員で仕えているときは、(総裁選には)出ない」というのが信条という。その意味では、むしろ、総裁選出馬へのハードルが取り払われたとも考えることができる。
自民党の総裁候補が枯渇する中、石破氏の存在感はいまなお大きい。「次の首相は誰がふさわしいか」との世論調査では、いまなお上位にランクインする。長年、党幹部や政府要職を重ねてきただけに「安定感」「キャリア」という意味では追随を許さない。
ただ、自身の主張にこだわる性格が災いして多数派形成は得意ではない。それが行き過ぎて「政界はぐれ鳥」とも揶揄(やゆ)される。
〝参謀〟不在も課題の一つだ。石破氏は自分で考え、自分で決めて、自分で行動してきた。しかし、首相を目指すのであれば、そういうわけにはいかないだろう。政局観に精通した同志が不可欠だ。
はたして、5回目の総裁選出馬があるのか。それとも、再び河野氏を担ぐのか。石破氏が今後どう動くか、注目していきたい。 (政治評論家・伊藤達美)