高知駅から5km離れた、樹木が生い茂る高速道路脇の側道。
9月27日午前4時半過ぎ、「男同士が喧嘩をして出血している」という通報を受け、急行した警察官らが目にしたのは、街灯の明かりすら届かない暗闇に立つ、拳を血で染めた若い男の姿だった。近くには鼻骨の折れた20代の男性が倒れていたが、既に息はなかったという――。
高知県警は28日、現場の側道にいた永橋龍和容疑者(23)を傷害容疑で逮捕した。さらに翌29日までに龍和容疑者の兄である永橋雄翔容疑者(25)のほか、田岡大河容疑者(22)、高橋朋也容疑者(23)、森田匠容疑者(24)を同容疑で逮捕した。
総勢5人の逮捕者を出した“壮絶リンチ”事件
5人は、20代男性の顔などを複数回殴り、鼻骨骨折など全治2カ月の重傷を負わせた疑いが持たれている。また同様に鼻骨が折れ、亡くなった状態で現場から見つかった別の20代男性の死にも関わった可能性が高いとみて、警察は慎重に捜査を進めているという。
総勢5人の逮捕者を出した“壮絶リンチ”は、一体なぜ起こったのか。全国紙記者が語る。
長時間にわたる凄惨なリンチが暗闇の中で続けられていた
「被害者側と加害者5人に面識はなかったようですが、どうやら違法薬物をめぐるトラブルが犯行の引き金になったようです。犯行時刻は26日午後8時半からの1時間とみられ、その間、被害者男性に寄ってたかって集団で殴る蹴るなどのキツい暴行をくわえました。亡くなった別の被害者男性が殴られたのはその後未明までのようで、長時間にわたる凄惨なリンチが暗闇のなかで続けられていた可能性が高い」
聞くに堪えない残虐な事件だが、いったい加害青年らはどのような関係だったのだろうか。
「みんな高校にも通っていなかった」
5人の関係を知る地元関係者が明かす。
「彼らは犯行現場からほど近い公立中学校を卒業した、地元のヤンキー仲間です。最近では、兄の雄翔のダチが経営する解体会社の仕事を、逮捕された皆で手伝っていました。一戸建てを壊して更地にするような仕事ですね。皆高校にも通っていなかったと思いますよ。
雄翔は、法人化はしていませんが『雄興業』の代表を名乗り、弟の龍和はナンバー2のポジションでした。他のヤツらはたまに手伝いに顔を出す感じで、アマゾンの配達をやってるヤツもいましたね。
雄翔は身長が170センチちょっとで大柄ではないですが、首から手の平までガッツリ刺青が入っていて、見た目はイカつかったですね。片親で3人兄弟、決して恵まれた育ちではなかったはず。今は子どもを2人持つ、責任ある父親という立場でもあったようです」
彼女との「アナ雪」プリクラデート
雄翔容疑者が中学を卒業して、まだ間もない頃のSNSには、当時の彼女との「アナと雪の女王映画デート」と書かれたツーショットプリクラをアップするなど、恋愛に楽しみ悩む青年期の投稿で溢れかえっていた。金髪にピアスと派手な見た目ながらも、千葉の建設現場にまで赴き、汗を流してマジメに働く一面もあったようだ。当時の投稿には、
《好きになれば切なくなることもある。行動すれば失敗することもある。信じていれば裏切られることもある。夢を追えば挫けることもある。生きていれば辛いこともある。でも、困難があるからこそ、人は強くなれるんだよ。とゆうことさ!》
などと、自らを鼓舞する初々しい様子も垣間見える。
一方、弟の龍和容疑者の中学校時代のSNSには、学校内で上半身裸でダンスを踊る動画をアップするなど茶目っ気全開の投稿が多く残されながらも、「オールで学校は流石にきつかった」「呑みきた」などと、タバコと酒が写り込んだ写真と共に“非行”を窺わせる投稿が多く見られた。
20歳を越える頃にもなると、兄弟の悪行はエスカレートしていったようだ。別の知人が話す。
兄弟は犯罪に手を染めていた
「聞いた話では2人とも寝坊は多かったようですが、上下関係や言葉遣いはしっかりとしていて月曜から土曜まで週6でマジメに働いていると聞きましたよ。ただワルであることは子供の頃から変わらず、『大麻やるとキマるんだよね』みたいなことを、仲間内で笑って話していたりと、兄弟が色々と犯罪に手を染めていることは周囲で知られていました」
今回の事件の引き金となった、「違法薬物を巡るトラブル」とは何だったのか。
「雄翔は事件前、『大麻を持ち逃げされた』と憤っていたようで、解体会社の社長には事件直前に『これから話をつけてくる』と電話で息巻き、被害者たちを呼び出したようです。酒なども飲んでいなかったようですし、ヤンキーのメンツもあって急にスイッチが入ってしまったのでしょうか。いずれにせよ、こんな惨事にまで発展させてしまったのは許されないことだと思います」(同前)
暴行はなぜ取り返しのつかないほどにエスカレートしてしまったのか。今後の真相解明が待たれる。
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(「週刊文春」編集部/週刊文春Webオリジナル)