法廷から 独占欲と怒りで…地下アイドルとファン、「カネ」で結びついた関係の果て

東京・池袋のホテルで昨年7月、女性を殺害したとして殺人や死体損壊などの罪に問われた男(38)の裁判員裁判の判決が11日、東京地裁で言い渡される。被害女性は大手事務所に所属しない「地下アイドル」として活動し、ファンだった男は、女性に金銭を渡したり、プレゼントを繰り返したりしていたという。法廷で垣間見えたのは、男のいびつな「独占欲」だった。
ホテルで凶行
令和4年7月10日の昼下がり。池袋駅近くのホテルに入る男女の姿があった。地下アイドルとして活動していた女性=当時(18)=と、宮城祐太被告。一見、年の離れたカップルにも見えるが、実態は被告が女性に金銭などを支払う「疑似恋愛関係」(検察側)に過ぎなかった。
人目を忍んだ「逢瀬」を終え、女性が帰り支度を始めると、被告は背後から腕を回し、鼻と口をふさいだ。約10分間続けた末に女性を窒息させると、女性に履いてもらうために持参したニーハイソックスでさらに首を絞め、殺害した。
その後、遺体を浴室に運んだ被告は、事前に購入していた包丁で頭部を切断。自身の家族に連絡して犯行を打ち明け、遺体を放置したままホテルを出ると、近くの交番に自首した。
「援助」繰り返し
今年9月に開かれた初公判で、起訴内容を認めた被告。公判では、被告が女性に行っていた「経済的援助」が事件の背景にあったと指摘された。
通常のアイドルと違いメディアの露出がなく、収入が不安定な地下アイドル業界では、アイドル自身がインターネット上で「欲しいものリスト」を公開し、ファンがそれを贈るという形での「応援」も行われている。
検察、弁護側の説明によると、被告は令和3年3月ごろから女性とLINE(ライン)でやり取りするようになった。
女性の求めに応じ、被告はパソコンやゲーム機などをプレゼントしたほか、現金も提供。女性からも好意を寄せるようなメッセージが届いたという。
被告は徐々に、見返りとして肉体関係を要求するようになった。
《ホテル来てくれたら10万円分クレカで好きな物買ってあげようと考えてた》《泊まりなら30万あげるけど、無理なら8時間で20万》
法廷では、被告が女性に送ったラインの内容も明かされた。
膨れ上がった借金
こうした援助の甲斐あって4年5~6月には女性と2人きりで2度会い、「目的」を遂げた被告。ただ、2度とも女性に金銭を支払っており、特に2度目の面会時には借金して工面し、58万円もの現金を手渡していた。
多額の金銭を貢ぎ続けることで成立するいびつな関係が、長続きするはずもない。当時、コンビニエンスストアでアルバイトしていた被告の手取りは月約20万円。当然、給料だけでは足りず、消費者金融などからの借金は計約150万円に膨れ上がった。
検察側は「これ以上、関係を維持できないと悟り、殺害して自分だけのものにして一体化することで、独占しようと考えた」と指摘。「ゆがんだ支配欲、独占欲、性欲を満たすために及んだ自己中心的な犯行」として懲役18年を求刑した。
これに対し弁護側は「被告は女性と交際していると思っていた。お金だけの都合のいい関係だったと悟り、独占欲というより怒りから殺害に至った」と述べ、より軽い量刑を求めた。
被告人質問で「彼女に会わなければ、貢がなければこうならなかった」と振り返った被告。「ゆがんだ愛の形だが、自分は悪人になって彼女と結ばれようと思った」とも語り、最終意見陳述では「本当に申し訳ありませんでした」と、深々と頭を下げた。(深津響、古賀達朗)

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