秋田市の住宅街で9日、ツキノワグマが出没。男女4人が相次いで襲撃され、病院に搬送される騒ぎがあった。また同日、石川・金沢市で散歩していた男性が襲われ、富山市でも女性が襲われる事故が相次いで発生している。
クマによる人身被害といえば北海道のヒグマによるものを連想する人は多いが、本州に生息するツキノワグマの人身被害件数も増えている。ヒグマより攻撃性が低いと言われるツキノワグマの人身被害が増えている理由は何なのか? 日本ツキノワグマ研究所の米田一彦氏はこう解説する。
「近年は人とツキノワグマの緩衝地帯だった里山が過疎化し、結果、行動圏が接して遭遇機会が増えたことが原因。また、里山が放置されて個体数が増えたのに対処できていないことも一因」
これから行楽シーズンを迎える。山へ出掛ける人も増えるが、米田氏は「10月から多人数が巻き込まれる事故が起きやすくなる」として、こう警鐘を鳴らす。
「人身被害を避けるには、遭遇しないのが重要。そのため音を出すのが有効と言われるが、何でもいいわけではない。一番効果的なのは、甲高い音の出るホイッスル。次に熊鈴だが、同じ熊鈴でも風鈴のような高い音が出るものが効果的で、ガランガラン音がするタイプは効果が落ちる」
これまで米田氏はさまざまな音をツキノワグマに試してきたというが、高い音が出るものほど敏感に反応するようだ。
一方、ラジオをクマよけに使う人もいるが、ラジオは地域によってまるっきり逆の効果になる可能性があるというだけに注意が必要だ。
「ネマガリタケというタケノコが出るシーズン、日本海側の地域では食べ物が入ったザックとラジオを道端においてささやぶに入り、戻ってくるときの目印にする。しかし、このザックがツキノワグマに狙われて、結果、食べ物を得た個体にとってラジオが餌のありかを教える役目になってしまい、山の中でラジオを流していると寄ってきたり追いかけられたりするリスクが高まる」(同)
これまで米田氏は数々の人身被害現場を見てきたが、なかには大音量の流れるラジオを胸に抱えたままの遺体もあったという。