クラウドサービスに蓄積されたデータの他社への移行を妨げた疑いが強まったとして、公正取引委員会は11日、三菱商事の100%子会社「MCデータプラス」(東京都渋谷区)を独占禁止法違反(排他条件付き取引)の疑いで立ち入り検査した。関係者への取材で判明した。公取委がクラウドサービスを巡って検査に入るのは初めてとみられる。
MCデータプラスは、ゼネコン向けにクラウドサービスを展開。クラウド上で建設作業員の各種資格や健康診断結果などのデータを管理し、建設業で求められる労務安全書類の作成を効率化する仕組みを提供している。
関係者によると、MCデータプラスは、顧客企業が同業他社に契約を乗り換えようとした際、MCデータプラスが提供するクラウドに蓄積されたデータの移行を拒否した疑いがあるという。個人情報保護などを理由にしていたとみられ、公取委は、競争相手と取引しないよう取引先に求める「排他条件付き取引」に当たる可能性があるとみている。
ゼネコン向けのクラウドサービスは三菱商事が開拓し、2015年に分社化されたMCデータプラスが市場シェアの7割強を占める。同社は作業員の現場配置や出退勤管理も組み合わせたサービスを提供しているが、近年は新規参入企業も増加しているとされる。公取委は、これらに危機感を抱いてシェアの確保を図ったとみている模様だ。
公取委の研究機関「競争政策研究センター」は21年6月、利用者のサービス選択の自由を確保して競争を促すため、データ移行のしやすさの重要性を指摘する報告書を発表している。
同社の広報担当者は「検査が入ったことは事実で、検査には協力していく」とコメントした。【渡辺暢】