強まる「解散風」臨時国会20日召集へ なぜ「減税」が大義に 岸田政権は「増税路線を示した時点で信を問うべきだった」

臨時国会の召集(20日)を前に、衆院解散・総選挙をめぐる思惑が交錯している。今月策定する新たな経済対策をめぐり、「増税・負担増路線」が目立った岸田文雄首相が「減税方針」を打ち出したのだ。「偽減税」との批判もあるなか、2023年度補正予算を成立させるには解散時期の選択が厳しいが、自民党幹部は「減税は解散の大義になり得る」との見方を示した。国民の負担を強いる増税で信を問うのは分かるが、どうして減税が大義となるのか。永田町で一体、何が起こっているのか。
「先送りできない課題に一意専心に取り組む。それ以外のことは今は考えていない」
岸田首相は9月29日、官邸で解散・総選挙の意向を問われ、こう語った。解散・総選挙の観測を打ち消したとの報道もあった。
内閣改造・党役員人事が不発だったせいか、岸田政権は最近、さまざまな政策を打ち出し、政権浮揚を図っている。先週末には、旧統一教会の解散命令を裁判所に請求する方針も浮上するなど、「政権の評価を高める話題作りに専念している」(野党ベテラン議員)との見方もある。
中でも、特に注目を浴びたのが、岸田首相が先月25日、新たに示した経済対策で、「税収増を国民に還元する」と明言し、「減税方針」を打ち出したことだ。
自民党の森山裕総務会長は1日、これに呼応するように、「税に関することは国民の審判を仰がなければならない」と述べ、減税措置が衆院解散の大義になり得るとの考えを示した。
ただ、岸田首相の解散姿勢は明確ではない。今年6月にも、解散風を強めながら、最後は自ら否定した経緯もあるだけに、永田町では解散に懐疑的な見方も広がっている。
臨時国会をめぐっては、岸田首相は新たな経済対策を裏付ける今年度補正予算案を提出する方針を示している。成立までは解散がしにくく、「解散の意欲は薄まった」(自民党中堅)との観測もある。
現状では、補正予算成立は11月下旬から12月上旬の見込みで、年内の解散シナリオはより困難となったかたちだ。
今月から、事業者間取引で消費税額を正確に計算するインボイス(適格請求書)制度も導入されたが、中小企業などから厳しい批判の声が上がっている。
混迷する政局をどう見るのか。
政治評論家の有馬晴海氏は「岸田首相は解散に意欲がある。総選挙に勝てば、来年秋の総裁選を無事通過する確度が高まる。現状でライバルはおらず、世論や政局を見極めているのだろう。ただ、解散・総選挙は国民の意に反する負担増などに『信を問う』もので、減税に大義があるとするのは筋が違う。それならば、増税・負担増路線を示した時点で、信を問うべきではなかったか。岸田政権の政策は単なるキーワードの羅列で肝心な財源や具体的方向性は先送りで、支持率狙いの様子見が鮮明だ」と語っている。

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