“子供放置禁止”条例案巡り県議会が騒然 委員会可決後の撤回は初

子供の「放置」を広く禁じる内容に県内外から批判が巻き起こった埼玉県虐待禁止条例の改正案をめぐり、県議会は13日、自民党県議団が提出した撤回請求書を全会一致で可決。改正案の取り下げが決まった。議場には約60人の傍聴者が詰めかけ、自民に対して説明を求めるやじが飛び交うなど、騒然とした。議員提出の条例案が委員会で可決された後に撤回されるのは初めて。
本会議では、立石泰広議長が「条例の運用にあたっては、その趣旨が十分に理解され、広く社会に受け入れられる必要があるため、その理由により本議案を撤回したい」と理由を読み上げ、撤回請求の採決が行われた。異議はなかった。
改正案を提案した自民は当初、場所、時間を問わず子供だけでいる場合を「放置」とし、児童虐待防止法が虐待と定める「放置」より広い範囲を禁止すると説明していた。これに対し、委員会審議では他会派から反論が相次いだが、自公の賛成多数で可決した。
その後、SNS(ネット交流サービス)などで県民らから「禁止事項が広すぎる」などの懸念が噴出。オンライン署名サイトでも条例改正案への反対を求める賛同者が急増した。自民は10日、「養護者が安全に配慮していれば放置に当たらないとの説明が欠けていた」などと釈明し、改正案を撤回する方針を表明していた。
この日、本会議に先立って開かれた議会運営委員会では、自民が撤回の趣旨を説明したのに対し、共産が「拙速な条例審議のあり方を反省すべきではないか」とただした。議員提案の条例案を出す場合、超会派の作業グループや公聴会を実施するよう提言したが、自民は「今この場で決める話ではない」「これまでも正規の手続きを経て可決されている」と取り合わなかった。
県議会閉会
県議会は13日、高齢者、障害者施設での新型コロナウイルス感染対策費など総額165億1057万円の一般会計補正予算案など、知事が提出した議案計40件を可決・同意して閉会した。
署名は10万超
県虐待禁止条例の改正案に反対し、オンライン署名サイト「Change.org」で署名を集めた野沢湖子さん(44)らが13日、自民党県議団のもとを訪れた。署名は12日現在10万を超えた。
野沢さんらは署名やサイトに寄せられたコメントに加え、今回の署名活動を通じてまとめた「子育て施策10の提言」を田村琢実団長に手渡した。田村団長は「多くの署名をいただき責任を感じている。子育て世代の皆様の声を反映できる政策を考えていきたい」と述べた。
野沢さんは「声を上げることが大事だと感じた。署名は親の声。悲痛な叫びがマジョリティーになった」と話した。提言では「子供に関わる条例や政策は、当事者の意見を尊重する手続きを明確に」「学童保育、保育園の待機児童解消、時間の拡充を」--などと求めた。【岡礼子】

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