新型コロナウイルスの感染が確認された患者に、医師が新型コロナの飲み薬を出す「処方率」が、10月1週目(1~7日)に急減したことが民間の診療情報データベースで明らかになった。飲み薬3製品(ゾコーバ▽パキロビッド▽ラゲブリオ)の合計の処方率は、9月最終週(24~30日)は22・2%だったが、10月1週目は13・1%と9・1ポイント低下。専門家は、10月から新型コロナ治療薬について一部患者負担を求め始めたことが影響しているとみている。
医師向け情報提供企業「エムスリー」が全国約4100のクリニックから集めた診療情報データベース「JAMDAS」によると、新型コロナの飲み薬の処方率は7月23~29日の週に20%を超え、9月最終週まで20%以上で推移してきた。国内では今夏、感染第9波が広がったこともあり、重症化リスクの高い患者らを中心に医療現場で一定程度、飲み薬の処方が定着してきたとみられる。
一方、政府は10月から、それまで「患者負担ゼロ」としてきた新型コロナ治療薬の公費支援を見直し、所得に応じて患者が上限3000~9000円を負担する対応に切り替えた。
新型コロナ治療薬は高額で、例えばラゲブリオの薬価は約9万円。窓口負担が3割の人は本来であれば2万7000円を払う必要がある中、政府としては激変緩和策として自己負担を最大9000円に抑えた形だが、患者側からは「負担増」と映っているとみられる。
国際医療福祉大の松本哲哉教授(感染症学)は「10月に入り『お金を払うのであれば薬はいらない』という患者が増えてきている。重症化予防という点で重要な薬で、内服した方が良いと思われる患者もいるが、説明しても拒否されると残念ながら断念せざるを得ない」と説明。この秋冬に懸念される新型コロナの再流行についても「ハイリスク者で薬を『使わない』選択をする人が増えると、医療負荷が大きくなる懸念がある」と語った。【横田愛】