夫の死亡を医師に知らせず、第三者の提供精子による生殖補助医療を受けた女性が妊娠した問題で、女性が通院していたはらメディカルクリニック(東京)は22日「夫が子どもの法的な親とならず、非匿名ドナーの権利を脅かす可能性をはらむ」との「公式見解」をホームページに掲載した。
法律婚の夫婦であれば民法の嫡出推定によって夫との父子関係が成立するが、夫の死亡後の治療で妊娠した場合は推定が適用されず、ドナーが「父」として子どもの認知を求められる可能性がある。日本産科婦人科学会の会告や同クリニックのガイドラインでは、提供精子による治療の対象を法律婚の夫婦に限定している。
同クリニックが公表した「見解」によると、女性は、夫の死亡を伏せて治療を受けることがガイドラインに違反することを認識しながら「子どもを持ちたいとの強い願望を優先し、行動に移していたことが確認された」と説明。この治療が依拠する「信頼と契約の原則を根柢から揺るがす」とし「法的措置を含め責任追及を行う予定だ」と明らかにした。
子どもの福祉の観点から重要とされるドナーの氏名など情報開示の法制化論議が進む中「生まれる子どもの出自を知る権利と、ドナーの権利が保全された法制化が実現し、この治療がそれぞれの立場にとってより安全なものとなる日を願っている」としている。