首相、所信表明で「税収増の還元」…ガソリン料金の補助延長など物価高対策も示す

岸田首相は23日午後、衆参両院の本会議で、第2次岸田再改造内閣発足後初の所信表明演説を行った。経済対策を最優先課題に掲げ、所得税減税の実施を念頭に、「税収増の還元」を打ち出した。ガソリンや電気・都市ガス料金などの補助を来春まで延長する考えも示した。
減税を巡っては、国の財政は借金である国債に依存する状況が続いているため、「税収増を還元策に回す余裕はない」との指摘が出ている。防衛力強化に伴う増税との整合性をどう図るかも課題となる。
首相は演説で、「低物価・低賃金・低成長のコストカット型経済」から、「持続的な賃上げや活発な投資がけん引する成長型経済」への移行を目指すと訴えた。今後3年程度を「変革期間」とし、具体策として賃上げに取り組む企業への税制優遇や、半導体など戦略分野への国内投資を促す減税制度の創設を挙げた。
物価高に賃金上昇が追いついていないとの認識に立ち、今回の還元策を「デフレ完全脱却のための一時的緩和措置」と位置づけた。還元策の手法や規模には踏み込まず、近く政府与党政策懇談会を開き、与党の税制調査会での早急な検討を指示すると説明した。
物価高対策としては、ガソリンや電気・都市ガス料金などの補助延長に加え、自治体の判断で柔軟に使途を決めることができる「重点支援地方交付金」を追加する方針も明らかにした。
人口減少社会に対応した「社会変革」として、「デジタル行財政改革を起動する」と表明した。子育て、教育、介護などの分野で、より質の高い公共サービスの提供を目指すとした。地域交通の担い手不足を深刻な問題と捉え、「(個人が自家用車で乗客を運ぶ)ライドシェアの課題に取り組んでいく」とも語った。
外交・安全保障では、ロシアによるウクライナ侵略やパレスチナ自治区ガザ情勢などに触れたうえで、「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序」の重要性を訴えた。
中国に関しては、「建設的かつ安定的な関係」の構築に向け、首脳レベルでの対話を継続する姿勢を示した。
北朝鮮による日本人拉致問題については、「私直轄のハイレベルでの協議を進める」と改めて述べた。
憲法改正に関しては、首相は来年秋までの自民党総裁任期中の実現を目指す考えを堅持している。残りの任期を意識しつつ、国会での改憲原案の発議に向けた手続きを進めるため、「条文案の具体化など、これまで以上に積極的な議論が行われることを期待する」と呼びかけた。

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