【サンフランシスコ=足利浩一郎】岸田首相は15日午後(日本時間16日朝)、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席するため、米サンフランシスコに政府専用機で到着した。首相と中国の 習近平 国家主席は16日午後(日本時間17日午前)に会談する見通しだ。中国による日本産水産物の輸入停止など課題が山積する中、日本側は懸案解決の足がかりにしたい考えだ。
松野官房長官は16日の記者会見で、「中国との間であらゆるレベルで緊密に意思疎通を図っていきたい」と述べた。会談が実現すれば、昨年11月にタイで開催して以来、1年ぶりとなる。日本政府は昨年、会談の3日前に予定を発表した。今回は一切の発表を控えており、最終的な調整が続いているとみられる。
中国は、東京電力福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出を受け、輸入停止措置に踏み切った。日本政府は、15日にスイス・ジュネーブで開かれた世界貿易機関(WTO)の衛生植物検疫(SPS)委員会で、「科学的根拠がない」として、措置の即時撤廃を求めた。中国側は「核汚染水」と呼ぶなど、従来の主張を繰り返した。
中国当局による相次ぐ日本人拘束なども未解決のままだ。外務省幹部は「両国のトップ同士が話し合わないと、物事が動かない」と指摘する。
15日には米中首脳会談が行われ、米中関係の一時的な緊張緩和への期待感が出ている。松野氏は記者会見で、「両国の関係の安定は国際社会にとっても極めて重要だ」と語った。日本政府は米中首脳会談の結果も踏まえ、日中首脳会談に臨む構えだ。