国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)の医療機器選定・使用を巡る汚職事件で、収賄容疑で警視庁に逮捕された同病院元医長の橋本裕輔容疑者(47)が、逮捕容疑となった約170万円の賄賂とは別に、贈賄側の医療機器メーカーから百数十万円を受領していたことが捜査関係者への取材でわかった。警視庁はこの百数十万円についても現金の趣旨を捜査している。
警視庁幹部によると、橋本容疑者は同病院の肝胆 膵 内科医長だった2021年5月、医療機器メーカー「ゼオンメディカル」(東京)が製造販売する「ステント」(金網状の筒)と呼ばれる医療機器を優先的に使用した見返りに、同社から約170万円を受け取った収賄の疑いで21日に逮捕された。
橋本容疑者は19年4月に医長に就任。同月、製品の安全性や有効性などを確認する「市販後調査」に協力する契約を同社と結んだ。契約は同社のステントを1本使用するごとに1万円の謝礼金を受け取るなどの内容で、警視庁は、20年度分として橋本容疑者が受け取った約170万円について市販後調査に実態がなく、賄賂に当たると判断した。
捜査関係者によると、橋本容疑者は19年度にも、契約に基づき、ゼオン社側から百数十万円を受け取っていたという。警視庁はこの19年度分についても、市販後調査に実態があったかどうかなどを調べている。
厚生労働省によると、市販後調査は厚労省の承認を受けて発売された医薬品や医療機器の安全性などを確認するためのもので、全国の医療機関で行われている。
橋本容疑者はゼオン社と契約を結ぶ際、病院側に兼業届を出していたという。
国立がん研究センターは21日の取材に「医師個人と業者間で結ばれる市販後調査に当センターは関知しない」としている。