ニュース裏表 安積明子 前途多難な「前原新党」の船出 維新・馬場代表の〝暴露〟が示す合流の真剣さ 過去に民進党建て直しが崩れた苦い記憶

国民民主党の前原誠司氏ら4人が11月30日に離党して、すでに立憲民主党を離れて無所属だった徳永久志氏と「教育無償化を実現する会」を結党すると表明した。
前原氏をめぐっては、京都新聞が同24日、「国民民主党が今年度補正予算案に賛成する場合に離党し、新党立ち上げを視野に入れる」と報じていた。前原氏はただちにX(旧ツイッター)で「誤報だ」と全否定したが、結果的にはそうなったことで、多くの批判を浴びた。
前原氏とともに離党を表明した斎藤アレックス氏は、同24日の衆院本会議で国民民主党を代表して補正予算案の賛成討論に立ち、前原氏も本会議に出席して賛成票を投じている。その経緯からして、「国民民主党が補正予算案に賛成だから離党する」という論理は成立しない。
国民民主党は昨年2月、ガソリン税を一部軽減するトリガー条項凍結解除を条件に、政府与党の2022年度本予算案に賛成した。前原氏はその際、「腹痛」を理由に〝欠席〟した。
ではなぜ、今回は離党したのか。過去と何が違ったのか。前原氏は同30日の記者会見で、「年内に衆院解散がないことを確認した」と述べている。
前原氏には17年、苦い記憶がある。蓮舫氏が1年足らずで代表を辞任した民進党を建て直すため、山尾(現・菅野)志桜里氏を女性初の幹事長に抜擢(ばってき)したが、スキャンダルで頓挫した。
さらに当時の安倍晋三首相の衆院解散を受け、小池百合子東京都知事が結成した「希望の党」に合流して生き残ろうとした計画は、小池氏の「(左派議員は)排除します」との一言で崩れ去った。
当時、前原氏が率いた民進党の勢力は145人。今回は政党交付金受給資格をかろうじて満たす5人のみだ。規模からみても、その将来には限度がある。
日本維新の会に合流する噂もささやかれているが、その道は容易ではない。小選挙区で勝てそうなのは現状、前原氏ひとりだ。前原氏らの合流で、日本維新の会の近畿ブロックの当選枠が拡大できればハードルは低くなるだろうが、彼らにそれだけの「集票力」があるかは、疑問だ。
また、日本維新の会の馬場伸幸代表は、前原氏らが会見する前に、新党名の「教育無償化を実現する会」を〝暴露〟した。両者の距離感の近さを示す出来事との声がある一方で、馬場氏が合流に真剣ではないことを印象付けた、との見方もできる。前途多難―。それでも、前原氏が選んだ道だ。 (政治ジャーナリスト・安積明子)

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