戦没者遺骨のDNA鑑定を迅速化するため、厚生労働省は2024年度、独自に開発したソフトウェアを導入し、収容した遺骨と国内の遺族から募った検体を照合するスピードを上げる。高齢化する遺族のもとに、より多くの遺骨を返還することを目指す。
同省は1999年度から、収容した遺骨からDNAを抽出し、2016年度からデータベース化。子孫に遺伝情報を伝える「常染色体」については、専用ソフトで遺骨と遺族のDNAの一致状況を調べている。しかし地中や海中に取り残された遺骨はDNA情報が欠損していることが多い。身元特定には、父から息子に遺伝する「Y染色体」や、母から子どもへの「ミトコンドリアDNA」も調べる必要があるが、これら二つはデータを目視で確認するため、照合に時間を要していた。
同省は21年度から約7100万円を計上し、残る二つのDNAも照合できるソフトの開発に着手。24年度から運用を始めることなどで、21年度までの3年間は約2400件だった鑑定件数を、22~24年度は1・5倍の3600件とする。
ただし遺骨の身元特定には遺族の協力が不可欠だ。同省はDNAの抽出を始めてから1239柱の身元を特定してきたが、収容したものの誰か分からない遺骨は1万2804に上る。
同省の「戦没者遺骨鑑定センター」でセンター長を務める信州大の浅村英樹教授(法医学)は「より多くの遺族からDNAが提供されれば、身元が判明する可能性が高まる」と話す。