ファーストレディ時代から森友学園問題や桜を見る会など数々の疑惑に関与し、その都度「私人」(閣議決定文書)と逃れてきた安倍昭恵夫人が、夫・安倍晋三氏の死後、巨額の政治資金まで引き継いだ。そのカネを私人として自由に使われては、「政治とカネ」の闇は一層深まっていく──。
安倍氏を秘書時代から支えてきた名物後援会長の伊藤昭男氏(伊藤製鋼会長)の葬儀が1月6日に地元・下関市で営まれ、昭恵夫人が弔辞を読んだ。
葬儀は伊藤家や安倍晋三後援会の合同葬で、安倍派から吉田真次・代議士、杉田水脈・代議士らが参列したが、安倍氏の元後援者の間で話題になっていたのは、「安倍氏の後継者」として当選した吉田氏の“困窮”ぶりだという。
地元紙記者の話だ。
「吉田氏は昭恵夫人の全面支援により当選し、後援会長にも昭恵夫人が就任した。しかし、安倍元首相が集めた政治資金は昭恵夫人が全部持っていったから、カネが全然なく、秘書も長続きしない。地元活動を中心的に担っていた私設秘書まで、周囲に“安すぎる給料”を嘆いて辞めてしまったほど。吉田氏は1月20日に初めての政治資金パーティーを予定しているけど、応援してくれた伊藤会長も亡くなったし、安倍派の裏金問題の捜査の渦中とあって、資金を集めるどころか開催できるのかも危ぶまれている」
事務所を辞めた元秘書を直撃すると、「一身上の都合です」としか言わなかった。事務所を通して吉田氏にも問い合わせたが、期限までに回答は得られなかった。
対照的に金満ぶりを誇っているのが、その吉田氏の後援会長に収まった昭恵夫人だ。
安倍氏が政党支部や5つの政治団体に残した政治資金総額約2億1000万円は、その死後、安倍氏の資金管理団体だった「晋和会」に集められ、政治家ではない昭恵夫人がそっくり引き継いだ(図参照)。
とくに不可解なのは安倍氏が代表を務めていた自民党山口県第四選挙区支部の資金の動きだ。同支部には、安倍氏の死後も党本部から政党交付金200万円が交付されたのをはじめ、企業献金、個人献金も続けられていた。ところが、昭恵夫人は「後継出馬はしない」と明言しながら、同支部の代表に就任し、総額約1億6400万円の資金を「晋和会」に移して2023年1月に支部を解散したのである。
昭恵夫人は吉田氏を「安倍の後継者です」と支援したものの、2023年4月の補選で吉田氏が山口4区から当選した時には、自民党山口県第四選挙区支部は消滅していたのだ(吉田氏は新たに「自由民主党山口県衆議院比例区第一支部」を設立)。