4万戸超で断水続く 水道管耐震化率の低さなど複合要因影響 能登半島地震

能登半島地震では発生から1カ月が経過した現在も、依然として石川県内8市町の4万戸超で断水が続いている。長期的な断水で住民は2次避難を余儀なくされるなど生活再建にも影響した。国は水道管の耐震化を求めてきたが、財源不足などで耐震化率は平均4割未満。半島という地形的な特徴もあり、複合的な要因で断水の解消に時間がかかっている。
石川県によると、31日午後2時時点、8市町の約4万890戸で断水が続く。うち奥能登(輪島市、珠洲市、能登町、穴水町)を含む6市町はほぼ全域に及ぶ。仮復旧は遅い地域で4月以降にずれ込む。断水の長期化は感染症の拡大やトイレの衛生環境の悪化など震災関連死のリスクが高まり、災害時の迅速な給水確保の重要性が改めて浮き彫りとなった。
石川県平均36%
甚大な被害が出た背景には、水道管の耐震化率の低さがある。
石川県の導水管や配水本管などの主要な水道管で、耐震性が認められた管の割合を示す「耐震適合率」は36・8%(令和3年度末時点)。同時期の全国平均の41・2%を下回る。同県の馳浩知事は1月27日の会見で「配管などの耐震化の遅れが今回のダメージの大きさに直結している」と述べた。
断水は過去の災害でも課題となり、厚生労働省は平成20年に省令を改正し、主要な水道管などについて、想定される最大規模の地震でも「重大な影響を及ぼさない」程度の耐震化を進めるよう自治体に求めた。令和10年度末までに60%以上に引き上げる目標を掲げる。
財政や人員限り
早急な耐震化が求められる一方、人口減少で財源や人員が限られる自治体は対応に苦慮する。
輪島市では水道の利用者数や使用水量の減少に伴い料金収入が減り、令和3、4年度決算で1億円以上の財政赤字が続く。限られた財源で法定耐用年数(40年)を超えた老朽管を優先的に修繕するため「なかなか耐震管に進めないのが現状」(担当者)だ。
輪島市は来年度に安定経営を目指し、水道料金の24%の値上げを検討していたが、市担当者は「その話ができる状況ではない」とした上で「避難で住民は減り、収入面でいうとより厳しい」と追い打ちがかかった財政難に頭を抱える。
応援阻み作業遅れ
さらに復旧を遅らせている要因として、半島の地形も影響する。
七尾市の場合、市内の7割の世帯が県が約100キロ離れた白山市の川から水を引き、管理する「県水」を利用。七尾市が河川の水などを浄水した「自己水」を利用する地域は2月後半までに通水するが、県水を利用する能登島地区は4月以降になる見通しで、市内でもばらつきがある。県水が来ない奥能登は浄水施設の多くが被災し、管の漏水調査や修繕までに時間を要した。
被災地では全国の自治体職員らが現地入りし、復旧作業支援に当たるが、活動拠点の確保が課題となった。東京都水道局の職員によると、現地での宿泊は難しく、金沢市から車で通ったといい「片道4~5時間かかりアクセスの悪さが作業時間を大幅に削った。シャトルバスなどでまとめて移動して渋滞を減らすなどの工夫をすれば、アプローチまでの時間を縮められる」と述べた。(王美慧)

近畿大・浦上拓也教授「地方の水道事業、広域的な連携を」
地方自治体では急激な人口減少などで1世帯当たりの水の使用量が減って料金収入の減少も続き、3~5年置きに値上げしないと経営が成り立たない深刻な状況になっている。財政的に余力がなく、耐震化を進めるほど水道料金も値上げしなければならず、小さい事業体ほど耐震化が遅れてしまう傾向にある。
限られた財源の中で重要施設や基幹管路を優先的に耐震化する必要があり、国の求める水準が地方にとって正解なのかも見極め、地域の実情に沿った対策を検討すべきだ。人口減少に応じた規模の縮小など、限界集落を持つ小さな自治体の今後の経営判断になる。
市町村の境界にとらわれず、広域的に協力して経営を統合する取り組みも政府の財政支援措置を活用して進められれば、災害の対応能力の向上、将来の持続可能な経営が実現するだろう。

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