日本を除く先進7か国(G7)の駐日大使が出席を見送ることが明らかになった長崎原爆の日(9日)の平和祈念式典。イスラエルの不招待について長崎市は「政治的判断ではない」としていたが、政治問題化することへの懸念から出席の見合わせを決めた大使もいる。長崎の被爆者からは6か国側の対応への戸惑いの声が上がった。
米英独仏伊とカナダの6か国の大使らは連名で長崎市に送った書簡でロシアや同国を支援するベラルーシを招待していないことを指摘。「イスラエルを同列に置くことは誤解を招く」などと懸念を示し、同国を招待するよう求めていた。
当時、長崎市はパレスチナ自治区ガザでの戦闘を踏まえ、式典で不測の事態が発生するリスクを考慮する必要があるとして、イスラエルの招待を保留していた。
市は7月31日、イスラエルの不招待を正式に決めたと発表。鈴木史朗市長は同日の記者会見で「リスクが軽減されるような動きに至っていない。厳粛な雰囲気で式典を実施するため、苦渋の決断だ。政治的な判断に基づくものではない」と説明していた。
大使の式典出席を見合わせることについて、6か国は取材に対し、イスラエルの不招待を理由に挙げた。6か国すべての大使が欠席することは異例。いずれも代理が出席する。
米国大使館によると、2011年以降、式典には政府代表を派遣している。22年に着任したラーム・エマニュエル大使も同年に出席、23年は台風のため出席を見送った。
大使館は「式典を政治問題化したくない、政治的なことを抜きにして、亡くなられた方を悼みたいという大使の意向があった」と答えた。式典には在福岡領事館の首席領事が出席する。
ジュリア・ロングボトム駐日英国大使も6日、「自国を守る権利を行使するイスラエルが、ロシアやベラルーシと同様の扱いをされていることに懸念を感じている」と述べた。
長崎市は書簡を受け取ったかどうかについて、「答えられない」としている。
こうした動きに対し、長崎原爆遺族会会長の本田魂さん(80)は「戦争が起こっている今だからこそ、各国の大使には被爆地に足を運んで、長崎の平和への思いを感じてほしかった。大使の出席見合わせは非常に残念」と語った。
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6日に平和記念式典を開いた広島市はイスラエルを招待した。式典には米英の駐日大使らが出席した。市によると、イスラエルの招待について、手紙やメールなどで約3200件の意見が寄せられた。大半が批判的なものだったという。