立憲民主党代表選(9月7日告示、23日投開票)への立候補を正式表明した野田佳彦・元首相(67)は、経済政策や共産党との距離感で中道路線を前面に打ち出した。次期衆院選での中間層の支持獲得をにらみ、他候補との違いを鮮明にする狙いがある。
野田氏は29日午前、千葉県習志野市で行った出馬表明で、党内に求める声がある消費税減税について記者団から問われると、「安易に減税するのではなく、現状を維持するのが基本だ」と否定。「安倍、菅、岸田政権で格差は広がってきた」として、自身が首相在任時に打ち出した「分厚い中間層の復活」を掲げる考えを示した。
共産党との関係では「対話のできる関係は必要だ」としつつ、「同じ政権を担うことはできない」として、連立政権を拒否する立場を明確にした。
党内では、代表選に出馬表明している枝野幸男・前代表(60)に「リベラル色が強すぎる」との見方があるほか、出馬の意向を固めている泉健太代表(50)にも政治経験の少なさを懸念する声が出ている。
野田氏はこの日、記者団とのやり取りの中で、話し合いを重ねてきた小沢一郎衆院議員との会談で「穏健な保守層まで狙わないと政権取りができないという方向感で一致した」と明かし、自民から離反した保守層の取り込みについて、「その役割を自分なら果たせる」と胸を張った。野田氏としては、首相経験者としての安定感に加え、中道路線を強調することで枝野、泉両氏との違いを際立たせたい考えとみられる。
相次ぐ要請…外堀埋まる
野田佳彦・元首相は代表選出馬について、内心では意欲を秘めつつも、ぎりぎりまで出馬表明の時期を探った。首相在任中に判断した衆院解散で民主党を下野させた経緯から、自ら積極的に意欲を示せば、党内の強い反感を買う懸念があったためだ。
代表選出馬について、野田氏は当初、「古い人ではなく新顔が出てほしい」と周囲に述べ、一貫して自身の出馬に否定的だった。野田氏周辺には、「首相経験者として代表選に挑戦して敗れれば晩節を汚す」との声もあった。
ただ、意中の「第3の候補」を見つけられないまま、自民党総裁選に注目が集まったことで、立民内で埋没への危機感が高まった。若手・中堅グループや、地元国会議員らからの要請を受けた形での出馬表明に、党内では、「『外堀』が埋まることで党内の反発をできるだけ抑えながら出馬表明できる環境が整った」との見方が出ている。