警察が捜査中の暴力団関係者を埼玉県内のアパートから逃がしたとして、犯人隠避罪に問われた女性の大家(77)に対し、東京地裁は11日、懲役1年、執行猶予3年(求刑・懲役1年)の有罪判決を言い渡した。
判決によると、女性大家は2月17日午後6時ごろ、自身が管理するアパートに住んでいた暴力団関係者に対し、警察が行方を捜していることを伝え、逃げるように促して逮捕を免れさせた。
暴力団関係者は、覚醒剤取締法違反容疑で捜査対象となっていた。
女性大家は警視庁の捜査員からこの暴力団関係者の所在について聞かれ、直後にそのことを暴力団関係者に告げていたとみられる。
女性大家はなぜリスクを冒して事件を起こしたのか。
女性大家は初公判で起訴内容を認めた。
検察側は冒頭陳述で、暴力団関係者は暴力団幹部からの紹介で入居し、女性大家の携帯電話の通話履歴には別の暴力団関係者の名前もあったと明らかにした。
女性大家は被告人質問で動機について「ヤクザとは知らなかったし、(病気で)食べるのも大変そうだった」と述べていた。
江口和伸裁判官は11日の判決で、体の弱い賃借人に同情したという女性大家の犯行動機は、警察の捜査から免れさせる理由にならないと述べた。
一方で女性大家が反省していることを挙げて、刑の執行を猶予するとした。
女性大家は埼玉県内に約30棟のアパートを所有。行く当てのない人たちを住まわせていたとされる。
暴力団関係者も入居者の一人だった。地元住民によると、女性大家の管理する物件の一部は「ヤクザアパート」と呼ばれているという。
ただ、女性大家によれば、暴力団関係者の入居者は数人しかおらず、事件後に賃貸借契約を解除したとしている。
暴力団関係者らは「迷惑をかけた」などと言い残して全員が退去したという。【飯田憲】