「存在」近づけ誤解解消を 宮内庁インスタ、開設から半年 動画拡充などで発信強化

宮内庁が4月に開設したインスタグラムの公式アカウントが、運用開始からまもなく半年を迎える。官公庁としては異例の180万人超がフォローするなど注目を集める一方、インターネット上などでは皇室に関する誤った情報やバッシングも散見され、的確な情報発信などが引き続き課題となっている。宮内庁は来年度、広報のさらなる強化を目指す方針だ。
SNS本格活用へ
《天皇皇后両陛下と愛子内親王殿下は、那須御用邸(栃木県)をご散策になりました》
今月13日、宮内庁のインスタに投稿された10枚の写真。天皇ご一家が和やかに談笑される様子に、多くの人が「いいね!」で共感を示した。
4月1日の開設以降、約半年間の投稿総数は112件。各種式典や被災地お見舞い、外国訪問など、天皇、皇后両陛下の公的なご活動を中心に、皇居の自然や皇室の伝統行事も紹介。スライドショーを含め、50本の動画も上がっている。
宮内庁はこうした素材をさらに充実させようと、来年度の概算要求に写真や動画作成の費用約1408万円を計上。また、来年度にかけて大幅刷新するホームページも含め、今後の広報の方針について専門家に助言を求めることにした。概算要求には、広報アドバイザリー料約1367万円も盛り込んだ。
インスタでは今後、両陛下だけでなく、ほかの皇族方のご活動を投稿していくことも検討中だ。こちらは予算措置によらず、調整がつき次第、拡大していく方針という。
関心「ない」過半数
同庁がSNS活用に力を入れる背景には、特に若年層で懸念される皇室への関心の薄さがある。
日本財団が5月に実施した、全国の17~19歳1千人を対象にしたインターネット調査によると、皇室への関心が「ある」「どちらかといえばある」と回答したのは44・3%にとどまり、「ない」「どちらかといえばない」が過半数だった。
どのような取り組みがあれば関心が高まると思うか、との問いには、SNSでの発信を上げた人が多かった。
同庁の担当者は「皇室は国民の総意によって成り立っている。幅広い層に、より深く理解してもらうための効果的な方策を考えたい」と説明。広報強化は、まだ緒に就いたばかりといえそうだ。
「憶測」拡散の背景
皇室の情報発信が議論される一つの契機となったのは、秋篠宮ご夫妻の長女、小室眞子さんの結婚を巡り、ネット上などで過熱したバッシングだった。
最近でも、ご夫妻の長男、悠仁さまの進学先を巡り憶測とみられる情報が拡散し、署名運動にまで発展。秋篠宮妃紀子さまは9月の誕生日の文書で、バッシングについて「穏やかに過ごすことが難しく、思い悩むことがあります」とも明かされていた。
皇室・王室制度に詳しい関東学院大の君塚直隆教授は、こうした現状について「過激なバッシングは問題だが、一部の層によるものだ。誤った情報が拡散する背景には、若年層を中心に皇室が『遠い存在』になっていることがある」とみる。
君塚氏は、国民との距離を縮めるためには、一方的な発信に終始せずコメント機能を活用したり、X(旧ツイッター)で行事を事前周知しリアルの触れ合いにつなげたりするなど、「各SNSの特性を生かし、連携させていくことも効果的だ」と提案する。
その上で「皇室の方々が、国民のためにどのような活動に取り組まれているかが十分に理解されなければ、皇室と国民の信頼関係は築けない。切迫する皇位継承や皇族数確保の議論も、国民の理解や関心が土台となる。広報強化は、皇室制度の存続にもかかわる問題だ」と警鐘を鳴らす。(緒方優子)

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