数々のアニメ作品を国内外に届けてきたクリエイターら36人が犠牲になった2019年7月の京都アニメーション放火殺人事件から4年余り。殺人罪などで起訴された青葉真司被告(45)の裁判員裁判が5日、京都地裁で始まった。車いすに乗って出廷した青葉被告は「当時はこうするしかないと思っていた」と起訴事実を認めた。平成以降の殺人事件では最悪となる犠牲者数を出した凶行の真相は明らかにされるのか。
京都地裁で最も広い101号法廷。午前10時半の開廷を前に傍聴席と法廷の間に透明なアクリル板が設置された。警備上の理由とみられ、青葉被告は制服姿の職員が押す車いすに乗って現れた。
青葉被告は事件で全身の9割以上に重いやけどを負って一時意識不明の重体となり、生死の境をさまよった。20年6月に地裁で行われた勾留理由を開示する法廷には、ストレッチャーで出廷し、横たわったまま氏名を述べていた。
この日の青葉被告は、丸刈りで白色のマスクをつけ、青色の長袖シャツと青色の長ズボン姿。肌にはやけどの痕が生々しく残り、後頭部にはやけどの影響のためか髪の毛がない部分もあった。法廷に入った後、遺族らが座る傍聴席の方に視線を向けたが、すぐに目をそらし、被告人席に移動した。
増田啓祐裁判長が名前や職業などを確認すると、青葉被告は車いすに座ったまま一礼し、「青葉真司といいます」と消え入りそうな声で語った。その後の罪状認否で「私がしたことに間違いありません。事件当時はこうするしかないと思っていた」と述べ、「こんなにたくさんの人が亡くなると思っておらず、現在はやり過ぎたと思っています」と続けた。
青葉被告は終始小さな声で、ろれつが回らず、法廷で聞き取りにくい場面もあった。増田裁判長の問いかけには、「はい」と返事し、何度もうなずいていた。
その後、検察側が冒頭陳述を読み上げ、開廷から約30分で休憩に入った。やけどの後遺症で、長時間の審理に耐えられない可能性がある青葉被告の体調を考慮した対応とみられる。
被害者参加制度に基づき、88席の傍聴席の約3分の1が被害者用に割り当てられた。遺族らは青葉被告の姿をじっと見つめていた。