衆参両院の全国会議員710人(欠員3)のうち、約3割にあたる205人が自身の公設秘書の兼職を認めていることが毎日新聞の調査で明らかになった。兼職をする秘書数は250人に上った。国費で給与がまかなわれる公設秘書の兼職は、国会議員秘書給与法で原則禁じられているが、議員が例外的に認めれば可能になる「抜け道」がある。専門家は「例外規定により、勤務実態の透明化を図るはずだった法の趣旨が骨抜きにされている」と指摘する。
毎日新聞は18日、日本維新の会の池下卓衆院議員(大阪10区)が地元の大阪府高槻市議を市議の任期中に採用していた問題を報道。20日現在で国会に提出されていた兼職届を衆参両院の事務局で閲覧・分析し、全国会議員の実態を調べた。
公設秘書の兼職を認める国会議員は全体の29%となる205人で、内訳は衆院132人、参院73人だった。政党別では、自民党が最も多く103人。立憲民主党43人▽維新25人▽国民民主党10人▽れいわ新選組7人▽公明、社民、政治家女子48の各党2人▽参政党1人――と続いた。
兼職を届け出た秘書数は250人で、衆院156人、参院94人。地方議員と掛け持ちしていた秘書はうち3人で、自民の逢沢一郎・元国対委員長(岡山1区)や立憲の福田昭夫氏(栃木2区)ら衆院議員3人に雇われていたことが分かっている。
公設3人全員が兼職のケースも
調査で判明した他の主な兼職先は、民間企業や医療法人、NPO法人、法律事務所など。兼職秘書のうち約7割にあたる172人が、秘書以外の仕事で報酬を得ていた。
大手家電メーカー出身の衆院議員の公設秘書は、3人全員がメーカーと関連する労働組合の役員を兼ねる。組合では資料作成などを担い、3人の報酬額は年間約140万~330万円と申告されている。
うち一人の秘書は取材に応じ、組合側の配慮で秘書業が中心になっていると説明するが、「向こうもやりながらこっちもなので、両立は大変な面がある」と語った。
親から引き継いだ農業を兼職先として挙げる別の衆院議員の公設秘書もいる。この秘書は「亡くなった親の田んぼを手放すのは申し訳ないと続けているが、休日に作業するぐらいで昨年は赤字だった」と話した。
公設秘書を巡っては2000年代、与野党の国会議員が勤務実態のない秘書の給与を詐取する事件が相次いで発覚。勤務実態を明確にしようと、04年に議員立法の秘書給与法改正で兼職が原則禁止された。
同時に、国会議員が「職務に支障がない」と許可すれば兼職できる例外規定もできた。「議員の当落に立場が左右される秘書の生活保障が必要」という事情が考慮された規定とされるが、与野党からは地方議員との兼職などの見直しを求める声が上がっている。【二村祐士朗、藤河匠】
公設秘書とは
国家公務員特別職に位置づけられ、国会議員は1人につき、政策秘書、第1秘書、第2秘書の計3人まで雇える。衆院事務局によると、給与は国から支払われ、主に在職期間や年齢、役割で異なる。2022年は政策秘書の年収がボーナスを含めて約740万~約1100万円で、月額一律3万円の通勤手当などもある。
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国会議員の公設秘書は法律で兼職が原則禁じられていますが、「抜け道」と指摘される例外規定により制度が形骸化しています。毎日新聞は秘書兼職を巡る問題点の取材を進めています。情報やご意見は、毎日新聞大阪本社社会部のメール([email protected])や〒530-8251(住所不要)大阪社会部「抜け道」を問う取材班までお寄せください。