防衛省が、対台湾窓口機関の台北事務所に現役職員を常駐させていたことが分かった。ロイター通信やNHKが13日、報じた。習近平国家主席率いる中国は近年、台湾周辺での軍事行動を活発化させており、「台湾有事」「日本有事」の懸念が高まっている。識者は今回の動きを評価しつつ、より踏み込んだ連携を呼びかける。
ロイター通信は、派遣の目的を「軍事を含めた情報収集や当局との意思疎通を強化」と伝えた。日本台湾交流協会の台北事務所に、「背広組」と呼ばれる文官1人を出向の形で派遣し、以前から駐在する退役自衛官と2人体制にしたという。
NHKによると、常駐は今年の春からで、現役自衛官でなく文官の派遣となったことについて、「台湾を自国の一部と主張する中国の反発を和らげたいため」とみられると分析した。
中国は近年、台湾と米国の接近に神経をとがらせ、台湾を取り囲むような大規模軍事演習を何度も強行している。
台湾国防部(国防省)が12日に発表した「国防報告書」では、2022年以降、中国軍の台湾に対する軍事行動が頻繁になるとともに多様化していると指摘し、実戦的な訓練などを通じ「台湾攻撃作戦の整備を強化している」と警戒感を示した。
外務省の海外在留邦人数調査統計によると、台湾に在留する日本人は22年10月1日現在、2万345人。日本からの訪台者もコロナ前の19年で年間約217万人もいる。有事が起きれば退避も含めた安全確保も課題となる。今回の動きをどうみるべきか。
福井県立大学の島田洋一名誉教授は「これまでなかったのがおかしいぐらいで、常駐は当然の措置だ。有事の際の邦人退避も重要だが、防衛省と自衛隊の役割の中心は、他国の侵略抑止だ。常駐から、台湾との合同演習実施などに広げ、中国の侵略と一緒に戦う姿勢を明確に示し、抑止力を高めるべきだ」と話した。