インド洋の島国モーリシャス沖で2020年7月、貨物船「わかしお」が座礁し、重油が大量に流出した事故で、運輸安全委員会は28日、調査の最終報告書を公表し、スマートフォンの電波を受信しようと船を島に近づけたことが原因だったと結論づけた。油の流出拡大には、コロナ禍での隔離措置に伴う船体の引き揚げ作業の遅れが影響したとみられると指摘した。
わかしおは、 長鋪 汽船(岡山)の所有・管理で、商船三井(東京)がチャーターし、ブラジルに向かっていた。20年7月25日午後7時過ぎ(現地時間)、モーリシャス島沖約2キロを航行中に座礁。同8月6日(同)以降、燃料の重油約1000トンが漏れ出し、周辺のサンゴ礁やマングローブに甚大な被害が出た。
報告書は、インド国籍の男性船長(61)とスリランカ国籍の男性1等航海士(48)が、スマホに意識を向けながら船を同島に接近させ、浅瀬に乗り上げたと認定。以前から電波受信のための陸への接近を繰り返していたとし、「乗組員全体の安全運航に関する意識が低下していた」と指摘した。
その上で、モーリシャスには大規模な油の流出に備えた資機材がなかったほか、気象状況の悪化や、引き揚げ作業にあたる作業員らがコロナ禍による入国制限・隔離措置を受けたことで作業が遅れ、流出拡大につながったとみられるとした。
油の除去作業は21年1月に完了し、22年1月までに船体を撤去。船長と1等航海士は21年12月、現地の裁判所で有罪判決を受けた。